【小説】『少女は夜を綴らない』を読みました。なんだこのメンヘラは!? グダグダじゃないか!

 ふと読む小説を探しているときに、あらすじを読む限りではいい感じのSF作品だったので購入したのですけど、よく見たら同じ作者の別作品を昔に購入したまま長いこと放置していたことに気がつきました。これは新しく買ったものを読む前に積読を解消するべきだと考え、今回読んでみた次第。

 ……正直買った覚えがないのですけど、紙の書籍ではなく電子書籍でちゃんと自分のアカウントから購入していたので、多分何かのセールのときだと思う。

  書籍情報

  著者:逸木 裕

 『少女は夜を綴らない』

  KADOKAWA 角川文庫より出版

  刊行日:2020/6/12

  あらすじ

「人を傷つけてしまうのではないか」という強迫観念に囚われている中学3年生の理子。身近な人間の殺人計画を「夜の日記」に綴ることで心をなだめ、どうにか学校生活を送っている。そんな理子の前に、彼女の秘密を知るという少年・悠人が現れる。暴かれたくなければ父親の殺害を手伝えと迫る悠人に協力するうち、徐々に心惹かれていく理子。やがて2人は計画を実行に移すが―。先読み不能の青春ミステリ!

 この作者さんの作品だと、以前『虹を待つ彼女』という作品を読みこちらで感想記事を書きました。そのときの感想では「完結した結末が用意されているが読んでいる間は全くもって結末の予測ができない」「結末に向けて話が進んでいるのに目指す場所がまるでわからない」みたいなことを書いていました。

 今回の『少女は夜を綴らない』でも似たような要素があり、冒頭から結末までを貫くような話の軸というか、目指す目的が曖昧な感覚がしました。一応ジャンルとしてはミステリーとかサスペンスに分類されるかと思いますが、そういったジャンルの作品だと主人公が事件を推理して解決するという大きな目的があるものですけど、この『少女は夜を綴らない』はそういった話ではなかったですね。

 冒頭では主人公である少女の小学校時代の回想にて同級生が目の前で死亡するシーンが描かれ、それが原因で加害恐怖の強迫性障害になるという主人公設定が明かされます。その後「夜の日記」に記した内容と酷似した殺人事件が発生し、「なるほど、じゃあ、日記の内容に沿って現実で殺人事件が連続するのかー」と読みながら思ったのですけど、実際はそうならず、全く違う展開に進んでいく具合。その後もとある殺人の協力をすることになるのですが、それもどんどんあらぬ方向に向かったいってしまう、という流れですかね。

 主人公の少女が強迫性障害であることもそうなのですけど、それに加えて主人公自身がかなりのネガティブ思考の持ち主なものですから、家でも学校でも大抵の物事がネガティブスパイラルでどんどん悪化してしまうなど、端的にいってしまえばメンヘラ拗らせた女子中学生。

 そんな主人公が書いた「夜の日記」の殺人描写もそうですし、実際に現実で行おうとする殺人の計画においても所詮机上の空論でしかなく、メンヘラ効果も合わさってうまくいかないのですけどね。そのあたり「中学生が考えた殺人計画なんてそんなもんでしょ」みたいな感じの妙なリアリティがあって面白い。もしかしたらメンヘラに加えて中二病要素もあるのかもしれません。

 そもそもこの主人公は、メンヘラ中二病ネガティブスパイラルのせいか、物事を解決する方向に向かうのではなくむしろ回避する傾向にある。そこがまたこの作品の特徴の一つで、一般的なミステリーやサスペンスのように主人公が能動的に動いて解決する流れにならないのは、こういった主人公の設定故であるかと。主人公が推理して解決していくのではなく、物事の変化(悪化)に翻弄された末に腑に落ちる、というタイプのミステリーといえるのかもしれませんね。

 結末に関しても作中で提示された謎や伏線を全て解消しているのですけど、それらは別に主人公が成し遂げたオチではなく、振り回された末に落ち着く形に収まった、という言い方がしっくりくるような気がします。

 そういう点でいうと、この作品ってかなりグダグダな内容なんですよね。主人公の少女がメンヘラ中二病ネガティブスパイラルなものですから、自分のことも家族のことも学校のことも、あとメインの殺人計画のことも全くもってうまくいかず、終始グダグダ。

 とはいえこのグダグダは作品の瑕疵としてのグダグダではなく、むしろ作品として高度な伏線や構成を用いたハイクオリティなものですので、高い筆力による質の高いグダグダ物語というのが、この『少女は夜を綴らない』という作品なのかもしれません。

 作中にて主人公の親友や後輩が登場しまして、この子たちは努力家で意志が強くポジティブないい子であり、困難があっても正攻法で乗り越えればいいとして、主人公から「強い人間」と言い表し、それができない自身のことを「弱い人間」と称していました。その「弱い人間」故に物事の最善を選ぶことができず事態がどんどん悪化していく様は、ある種のリアルを感じさせるものでしたね。

 正直、主人公の少女の言動に対して、自分としては「なんやねんこのメンヘラ」と若干イラっとしながら読んでいましたけど、そう読み手に感じさせるほどの高い描写力であることの証左でもありますし、また作中で語られた言葉でいうならば自分はこれでも「強い人間」側なんだと思わされましたね。

 とりあえず、こんなにハイクオリティなグダグダは初めてでなんか新鮮で面白かったです。

 という感じで『少女は夜を綴らない』でした。これで心置きなく購入したSF作品が読めそうです。

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