【小説】『蒸気と錬金 Stealchemy Fairytale』を読みました。タイトルからしてスチームパンク感ムンムンだぜ!

 今年の初め頃、早川書房の新刊をザっと眺めているときに、タイトルからしてスチームパンク感ムンムンな作品が気になりまして、ずっと気になっていたのですけど、ようやく読みました。いつものことながら積読といえばそうなんですけど、積読以前に購入前からすでに渋滞気味になっていたものです(Amazonでいうところの欲しいものリスト積読)。

 まあそれはさておき、スチームパンクものって探そうよ思うと案外見つからなくて、そのためこういった一発でスチームパンクっぽさがわかる作品は貴重だと個人的に思ったり。

 ということで今回はこれ。タイトルはズバリ『蒸気と錬金 Stealchemy Fairytale』。うん、直球。

  基本的な書籍情報。

  著者:花田一三六

 『蒸気と錬金 Stealchemy Fairytale』

  早川書房 ハヤカワ文庫JAより出版

  刊行日:2021/2/17

  あらすじ

 蒸気錬金術の実用化に成功、急速な発展を遂げつつある大英帝国。ロンドンで暮らす売れない小説家の「私」は食い詰めた挙げ句に、編集者から理法と恩寵の島アヴァロンへの取材旅行を提案される。傑作の執筆を志して一念発起した私は、見知らぬ若紳士から格安の蒸気錬金式幻燈機と妖精型幻燈種――ポーシャと名付けた――を売りつけられ、揚々と旅立ったが!? 蒸気と幻燈がゆらめき、錬金と理法が踊り舞うフェアリーテイル。

 いかにもスチームパンクなこの作品ですが、内容としてもまさに蒸気と錬金なスチームガジェットが登場するかなりエモいものとなっています(SF的にはセンス・オブ・ワンダーと言った方がよろしいのでしょうか?)

 大まかな設定などはあらすじなどでも書かれていますけど、簡単に説明すると蒸気で錬金術をするもので(そのまんま!?)、主人公は帽子型のガジェットを手に入れ使っていくことになります。19世紀の紳士が身につけるようなあの帽子に、ツマミやらシリンダーやらがくっついているといった、いかにもスチームパンクな様相。もうそれだけで割と満足できてしまえるくらいのスチーム要素でした。

 で、その帽子型のガジェットによる蒸気錬金術で生み出されるのが幻影としての妖精の相棒。現代の感覚で言うならば拡張現実で表示されるサポートAIといったところでしょうか。ちょっと違うかもしれませんが、VTuberがホログラムにて視界に入ってくるみたいな感じかも。

 そんな実体のない妖精型の相棒と無能主人公の二人(?)で、旅行記を書く建前で旅をするというのがこの作品のお話になります。

 ただこの相棒が一癖も二癖もあり、まあー口が悪い。毒舌で高飛車な妖精型相棒はズバズバと鋭利な発言を繰り返していく。一方主人公も主人公でかなりポンコツで、よく道に迷う(本当に作中で迷子になりまくっている)し、職業が作家だけどまともな表現ができない(作中で自他共に三文作家と散々呼ばれており、旅行記のていで語られている本編においても適した表現ができないことを自虐的に言い訳する始末)など、無能過ぎて相棒の毒舌を否定することができないという体たらく。おそらく普通の人であれば妖精型相棒の口調にイラっとくるかもしれませんが、主人公があまりにも無能過ぎるためむしろ「もっと言ったれ!」と応援したくなるくらいです。

 でもこういったやりとりがさながらボケとツッコミみたいな感じで面白おかしく笑ってしまえる。ある意味ではライトノベルのギャグシーンみたいな感じでしょうか。多分この無能主人公と高飛車妖精型相棒との会話シーンはずっと読んでいられるくらいコミカルで面白いものでした。

 そうそう、この作品では、メインの舞台がイギリス(大英帝国)ではなく旅行先となる島国になるのですが、この旅行先では蒸気錬金術とはまた違った技術体系の存在があり、語り部であるイギリス人の主人公はその技術についての造詣がないものですから、表現としても抽象的なものとなっています。

 このあたりは、さながらある種の魔法のような感覚を抱かせるかと。よく、発展した科学は魔法と見分けがつかない、と言われることがありますが、まさに造詣のない主人公にとって島独自の技術は魔法のような現象であります。その主人公による旅行記のていで語られている本編ですので、読んでいるこちらとしてはまさに魔法という印象を抱かざるを得ないといった具合です。……まあ無能主人公ですから主人公の理解が足りてないが故の表現で魔法みたいになってしまっているのかもしれない。

 ただそういったところをみると、この作品では蒸気錬金術というメインガジェットを題材にしたスチームパンク作品であると同時に、ファンタジーとしても読み解くことも可能であり、さしずめスチーム・ファンタジーといえるのかもしれませんね。

 というより、steampunk(スチームパンク)の「S」と、fantasy(ファンタジー)の「F」ということで「SF」作品ではなかろうか。……考えすぎ?

 とにもかくにも、スチームパンクでファンタジーなのがこの『蒸気と錬金 Stealchemy Fairytale』を読んだ率直な感想でした。

 ……ところで、本編中で謎というか疑問というか、未解決な要素が多々ある感じで結末を迎えていましたけど、これもしかして続編とかあるのかな? なんか一応一つの物語として話を完結させていますけど、でもいくらでも続編を書くことができそうな終わり方でもあるので、もしかしたらシリーズものになるのかしら? どうなのかしら?

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