【小説】『プシュケの涙』を読みました。別作品かと思うくらい前半と後半で話が全然違った

 せっかくの夏なので、夏らしい夏にちなんだ小説を読もうと思い、AmazonやBOOK☆WALKERを徘徊。まあ前に読んだ小説作品が真冬の設定でして、真夏に読んでいる身としては違和感半端なかったので、せめて季節感を合わせたいということで見つけた作品。あらすじが「夏休み~」で始まっていたので季節感としてはちょうどいいかも、という理由だけで手に取りました。タイトルは『プシュケの涙』。

  基本的な書籍情報。

  著者:柴村 仁

 『プシュケの涙』

  講談社 講談社文庫より出版

  刊行日:2014/10/15

  あらすじ

 夏休み、補習中の教室の窓の外を女子生徒が落下していった。自殺として少女の死がひそかに葬られようとしていたとき、目撃者の男子に真相を問い詰めたのは少女と同じ美術部の由良だった。絵を描きかけのまま死ぬはずがない。平凡な高校生たちの日常が非日常に変わる瞬間を鮮烈に描いた、青春ミステリーの傑作。

 所謂学園ミステリーもので、学校内で亡くなった女子生徒の死の真相を解き明かそうとする話。このあたりはミステリー作品としてはよくある内容かと思います。ただ個人的に意外だったのが、登場人物たちの配役でしょうか。

 自分としてはそこまでミステリー作品を読み漁っているわけではないので、本物のミステリーファンの方からしたら「そういうのはよくある」「やりつくされたネタ」と笑われてしまうかもしれません。しかし自分としてはなかなか面白い試みではないかと思いました。

 というのも、ミステリー作品といえば探偵役がいたり、作品によってはワトソン的な助手役がいたり、そして当然のことながら犯人役がいるものだと認識しています。

 とくに助手役が語り部としての主人公であることが多く(偏見込み)、物語の構成としても探偵役と一緒に事件の謎を追いかけつつラストで探偵役が披露する推理を聞く、というある意味では読者の視点をそのまま作中に登場させたかのような役割を担うことがあるかと思います。また助手役を置かないミステリーであれば探偵役がそのまま主人公を務めるかと思います。

 今回読んだ『プシュケの涙』でも、語り部たる視点人物とは別に探偵役がいて、それがあらすじにも登場している由良になります。

 ただ由良という人物はどちらかというと主人公サイドの人間ではないのがポイントで、その他犯人役とかもセオリーとはまた違った配置になっており、よくあるミステリー設定ではあるものの見せ方にちょっとした珍しさがあって楽しめました。「そうくるのかー」とか「主人公の立ち位置はそうなのかー」と意外な真相&結末でした。

 まあミステリーとは別に実際のお話の内容としては、かなり胸糞な話ですけどね。普通に誰も報われなくてバッドエンドみたいな感じ。とりあえず犯人役というか黒幕というか、事件の原因となった人物については万死に値するクソ野郎であることは間違いない。

 というのが、『プシュケの涙』の前半部分になります。この作品は言ってしまえば二部構成のようになっていまして、後半からはまた別のお話が始まるのです。

 後半からは、前半で亡くなった女子生徒の視点によるお話。事件そのものの話ではなく、前半では探偵役だった由良との関係性を描いた青春ドラマといったところ。ある意味では前半のミステリーパートへの補完的なエピソードとなっている。そのせいもあってか、後半パートではミステリー要素が皆無になっているのです。

 まあ高校生の男女の距離感の変化を描いた内容ですので正統派青春ドラマと言えますが、内容の雰囲気としては鬱々としたシリアスで人間関係とかもドロドロで正直に言えば決して明るい話ではないです。

 ただこういったシリアスな青春はどことなく少女漫画的ともいえるのかも。女の子が主人公で、いじめとか家庭問題などといった鬱展開をやりたがり、一方でイケメン君とは嫌々な反応をしつつも結果として距離が縮まっていくさまは、なんか少女漫画とかでよく見る話だと思います(偏見あり)。

 そういうこともあって、一工夫加えられているものの真っ当なミステリーパートであった前半とは全然違うお話が後半で描かれていることになります。いや同じ学校が舞台で登場人物も共通しているのでお話としては繋がっていますけどね。でも見方によっては前半と後半それぞれが独立した作品として発表されても全く違和感がないくらい、内容の雰囲気が別物だったという感想です。

 そして後半パートを読んだあとに前半を読むと、より前半パートの胸糞具合が跳ね上がるような気がします。というかコレ、前半と後半を入れ書いた構成になったらそれはそれで面白いかも。一応後半パートの方が前日譚的というか、時系列としては後半パートの方が先なのですが、時系列順にしても一つの物語として成立しそうな気がしました。というか記憶を消して順番逆で読んでみたいかも。

 という具合に、青春ミステリーとして面白い作品でしたが、ただの青春ミステリーに終わらないいろいろな工夫が施された作品だった、というのがこの『プシュケの涙』を読んだ感想でした。

 あと読み終わってから知ったのですが、この作品初出が電撃文庫の単巻ラノベで、その後メディアワークス文庫で再販されそのタイミングで続編が出てシリーズ化し、さらに出版社を飛び越え一般文芸として講談社文庫で再々販した(一作目のみ)ときにまたシリーズ最新作が出たという、多方面に展開していることに驚きました。

 ちなみに『プシュケの涙』単体で話は完結しています。『プシュケの涙』は人気作であるらしくAmazonでも在庫あるのですが、以降のシリーズ作は新品在庫がないし電子書籍にもなってない……。シリーズ読めないじゃん!

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