【小説】『プラネタリウムの外側』を読みました。理系の恋物語なのかもしれない

 今年からBOOK☆WALKERの電子書籍を利用し始めたことにより、Amazonで紙の本を買わなくなりました。そのせいかAmazonの欲しいものリストの新しい方とかは普通に家電とか日用品などばかりで、下の方には欲しいものリストに入れたものの買うことなく長期間放置になっている本たちが山積みに……。Amazonホント便利なので、欲しいものリストに入れるだけ入れて買う前からすでに積読していることが多々あります。そしてAmazonで本を買わなくなったのでその購入前積読が解消されることがなく……。

 と、いい加減何とかしなければと思い、欲しいものリストを消化を開始。Amazonの欲しいものリストを見ながらBOOK☆WALKERの電子書籍を購入していきました(BOOK☆WALKERではなくkindleで買え! というツッコミはなしでお願いします)。

 今回読んだのは、かなり前に欲しいものリストに追加して放置していた小説『プラネタリウムの外側』です。

  基本的な書籍情報。

  著者:早瀬 耕

 『プラネタリウムの外側』

  早川書房 ハヤカワ文庫JAより出版

  刊行日:2018/3/20

  あらすじ

 北海道大学工学部2年の佐伯衣理奈は、元恋人が友人の川原圭の背中を、いつも追いかけてきた。そんな圭が2カ月前、札幌駅で列車に轢かれて亡くなった。彼は同級生からの中傷に悲観して自死を選択したのか、それともホームから転落した理性を救うためだったのか。衣理奈は、有機素子コンピュータで会話プログラムを開発する南雲助教のもとを訪れ、亡くなる直前の圭との会話を再現するのだが。恋愛と世界についての連作集。

 所謂人工知能もので、大学所有の有機素子コンピュータを使って出会い系ネットサービスの副業をして、そのサクラとして高度な会話プログラムを運用するという、なかなか度胸のある設定周り。この副業で何千万円も荒稼ぎしてるこの南雲先生たち、ただ者じゃねぇな……。

 という感じの話で、あらすじでは佐伯衣理奈という女子学生が主人公のような書かれていますが、全体をみるとむしろ主人公は南雲先生の方と言えます。一応連作短編であり表題作の内容がまさにあらすじ通りとなっていますけどね。ある意味では群像劇的に視点が変わるもののメインは南雲先生である長編小説と言えるかもしれません(とはいえ佐伯衣理奈の出番も多い)。中盤からオチに至るまで南雲先生と佐伯学生のお話という感じ。

 人工知能ものということで、作中では人工知能にまつわる専門的な用語が多々出てきます。人工知能に馴染みのない方だと何を言っているのかわかりづらいかと思いますが、ある程度人工知能やITについての知識があるとすんなり読み進められる内容です。

 そこまで難しい前提知識というよりは、人工知能関連についてのある程度の概要さえ知っていれば大丈夫といった具合。自分も他作品で人工知能が登場するSFから仕入れた知識程度で普通に読めましたので、そういう意味であればSFファン向けの作品なのかもしれません。……まあこの『プラネタリウムの外側』という作品自体ジャンルはSFなのでSFファン向けであるのは当然なんですけどね。

 こういった人工知能ネタを取り入れているわけですが、この人工知能にまつわる描写は「問い」のようでもあり、人工知能の可能性としてもそうですし、もっと広くIT関連としても盲点ともいえる着眼点は、ある種の哲学的な問いかけに通ずるものがあるといったところ。面白い見解が多く出てきます。

 ベースは人工知能なのですけど、そこから過去や現在といった因果論的な問いかけ、さらには人間の記憶や記録への問いかけ、しまいには人の死への誘惑みたいなものなど、「人工知能はそこまでできるのか!?」という驚きがありました。実際に考えてみると「あり得るかも」と思わせるものも確かにあるといった感じ。可能性と言うと聞こえはいいですが、見方を変えるとホラー的ですらある。

 こういった人工知能のシーンは大変興味深く、読んでよかったと思える一冊だったような気がしました。

 そうそう、本筋のお話ですけど、この作品はどのエピソードも恋愛ものとしての話になっています。まあ大学の設備で秘密裏に高度な出会い系サービスを運営しているくらいですからね。人工知能と恋愛を組み合わせているという感じ。

 ただ一般的な恋愛作品のように感情面を直接描写していくわけではなく、人物の感情を描きつつもどこかロジカルが密接であるというイメージで、恋愛ものではあるものの、それはあくまで広義的な意味での恋愛ものであるといったところ。なんでしょう、理系の恋物語とでも言えばいいのですかね。普通な恋愛作品にはない面白さがあったような気がします。

 あとこの作品は所謂エンタメ作品のような派手な面白さは控え目で、むしろその分文学的な表現が魅力的とも言え、前述の人工知能関連の着眼点のいい見解なども合わさり、どことなく高尚さがうかがえるような作品だったと感じましたね。なんでしょうかね、小説だなって感じの作品。当たり前ですけど。あとコンピュータをプラネタリウムにたとえて内側と外側を表現してタイトル回収していくの、なんか素敵だなと感じました。

 という感じで、今回は長いこと購入前積読していた『プラネタリウムの外側』を読みました。大人な感じでいい作品でした。

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