【小説】『ノノノ・ワールドエンド』を紹介。これぐらいの塩梅がちょうどいいんですよ

『終わらない夏のハローグッバイ』の記事にて、「ライト文芸系の青春とサイエンス・フィクションを足して二で割った作品が好き」ということを書き、ライト文芸レーベルでSFっぽい作品やハヤカワ文庫でライトノベル作家が書いた作品を好んで読んでいることをお話しました。

 で、じゃあ今まで読んできた中で個人的にヒットした作品ってなによ? と思い、いくつか候補を出してみて(そもそもライト文芸×SF作品が少なく候補作は全然ないのですけど)、そのうちの一作を今回ご紹介。タイトルは『ノノノ・ワールドエンド』です。

  基本的な書籍情報。

  著者:ツカサ

 『ノノノ・ワールドエンド』

  早川書房 ハヤカワ文庫JAより出版

  刊行日:2016/2/24

  あらすじ

「世界なんて終わっちゃえばいい」暴力を振るう義父と受け入れるだけの母、良いことなんて何もない毎日に絶望する中学三年生・ノノ。彼女の願いをかなえるかのように、白い霧に包まれた街から人々は消え、滅びのときは数日後に迫った。望み通りの終末に怯えて逃げ出したノノは「世界が終わっちゃうのは、あたしのせい」と告白する白衣の少女・加連と出会う。そして少女二人きり、何処にも辿り着けないおしまいへ向かう旅が始まる。

 作者はアニメ化もされたライトノベル『銃皇無尽のファフニール』の方。まあこの作品に関しては、悪い言い方になるかもしれませんが当時の量産型ラノベといったところで、アニメ制作があのディオメディアということもあり、その、いろいろと察していただければ幸いです……。

 なんだか否定的なことを書いていますが、ライトノベル作家のツカサ氏が早川書房で出したSFがこの『ノノノ・ワールドエンド』という作品になります。個人的にはかなり好き……というか自身のストライクゾーンに直撃した作品でした。

『ノノノ・ワールドエンド』がどういったお話なのかというと、端的に終末世界でのガール・ミーツ・ガール作品です。……ええ、まあ、つまり百合SFなんですけどね。

 ただ百合SFだから好き、というわけではなく(もちろん百合は大好物なので百合要素が気に入っているのもあります)、単純に十代の若者を描いた作品として「青春だなー」と感慨に浸ることができ、主にその部分で気に入っているといった具合です。

 物語は、霧に包まれた日本が舞台。「気化現象」と呼ばれる濃霧の中で人が消失する怪奇現象が発生しており、人々は少しでも霧が薄い地域に避難しようとし、加えて気化現象によって存在そのものが消えているのもあって、街から人の姿がなくなりゴーストタウン化が進行しているというお話。

 主人公の女の子も家族で避難している最中でしたが、諸事情により避難から抜け出し、その先でヒロインと出会います。そのヒロインは、まあ語弊がある言い方をしますと(ここ大事)つまりは黒幕なんですけど、その関係で東京を目指して霧の中を進んでいまして(作中における東京は既に霧の支配下にあります)、主人公もともに行動するという流れになります。

 その東京へ向かう道すがら霧によってもたらされる人間ドラマであったり怪奇現象の遭遇であったりするエピソードが描かれ、さながらロードムービーのような展開をみせていくストーリーといった感じかと。ロードムービーを終末SFとして描いている作品と認識していただければ大丈夫です。

 二人の少女の出会いから始まり、目的地に近づくにつれて二人の仲も深まっていき、後半いい具合に百合百合して、オチとしても百合的にとてもおいしいものとなっています。……なんだか思いっきり百合推ししていますけど、いやまあ十代の女の子二人の友情や愛情を尊く描き切っている点に関しては百合どうこう関係なく青春ものとしてとても素晴らしかったです。女の子二人だから百合になっているだけですきっと。

 あと主人公の家庭環境からくる心情の表現をした語りは、まさに中高生が抱いていそうな鬱屈感がそのまま出ていて、物語をより青春たらしめているといったところ。この部分がライト文芸系の青春を感じさせているという印象を受けましたね。

 といった感じで青春要素(百合要素)について語ってきましたが、この作品は終末ものということもあり、つまりは青春(百合)だけではなく普通にサイエンス・フィクションなんですが、このサイエンス・フィクションの要素がまた絶妙であると個人的に感じていて、そこがまたお気に入り要素となっているといったところでしょうか。

 サイエンス・フィクションとしてそこまでハードなものではありません。もちろん作中において「霧」の設定や考察が語られるシーンはあり、しっかりサイエンス・フィクションをしているのですが、その霧関係のシーンに傾倒し過ぎていないところがポイントとなります。

 SF作品でありがちな(とくにアマチュア作品など)、ストーリーそっちのけで設定だけを長々と書いてしまっていて、最早物語ではなくただの設定資料集や思考実験の論文になってしまっている作品が少なからずあると思います。まあ小説を書くにあたって厳密なルールみたいなものは存在せず自由に書いてかまわないのですが、それにしたって物語性が薄いと感じてしまう作品はあります。こちらとしては「物語」が読みたいのであって、別に設定が読みたいわけではないのに……。「アイディアは面白いけど話は……」という感じ。物語のための設定であって、設定のための物語は個人的にどうなの? と思うときもあります。

 そういった観点からいうと、この『ノノノ・ワールドエンド』というSF作品は、「物語」と「設定」のバランスが自分の好みと合致した、といった感じかと。あくまで二人の少女の青春物語にスポットをあてて、その青春物語を邪魔しない程度にSF要素をスパイスしているので、作品の物語をしっかり楽しく追うことができるように仕上げられている具合です。

 反面、サイエンス・フィクションの要素が薄まってしまっているので、SFファンの方が読むと物足りなさを感じてしまうかと思います。このあたりが『ノノノ・ワールドエンド』という作品の賛否が分かれる要因となっているかと。レビューや感想を検索してみると、やはり百合物語としては好評だけどSFとしては意見が分かれているといった印象ですかね。

 ただこの『ノノノ・ワールドエンド』という作品の主題はあくまで「少女たちの物語」という部分になり、サイエンス・フィクション要素は少女の物語を成立させるための舞台装置として機能しているので、「主題の部分が面白ければそれでいいじゃん」というのが個人の感想です。多分これ以上に「霧」の設定を突き詰めてしまうと主題が曖昧になってしまうかと思いますので、これはこれでいいと考えています。

 というか普通に青春SF(百合SF)として素晴らしい作品だと思っています。自分の好みがライト文芸系×サイエンス・フィクションですので、まさにその狭くニッチなエリアにうまく収まった作品ということで、個人的にはお気に入りの一冊です。

 ……といった感じで記憶を頼りに記事を書いていたらまた読みたくなってきたので、恐らくこの記事を公開した後に再読します。というか書きながらパラパラと部分的に流し読みしていましたけど、やっぱコレ好みに合致していて面白い作品なんですよね。いやたまらんわー。

 ちなみにですが、作者の最新作が去年に出たのですけど、これがまた百合終末作品なんですよねー。タイトルは『明日の世界で星は煌めく』といって小学館ガガガ文庫から出ているライトノベルになります。こちらはどうやら魔法とか出てくるようでSFというよりは現代ファンタジー的な作品になるかと思います。ザっとレビューを読んでいくと、何やら伏線とか残したまま終わっており「続きが気になる」的な感想がそれなりに見受けられましたので、恐らくシリーズラノベなのではと。読んでみたいですが中途半端なところで読み終えてしまうのもアレなので、続刊が出てから様子見してみます。

 まあなにはともあれ、青春(百合)ロードムービーポストアポカリプス作品の『ノノノ・ワールドエンド』でした。

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