【小説】『この青い空で君をつつもう』を読みました。よくあるライト文芸かと思いきや作者が意外過ぎた

 いつものことながらAmazonをあてもなく彷徨って気になった本をとりあえず「ほしい物リスト」に突っ込んで気が向いたら購入していますが、最近は電子書籍サイトBOOK☆WALKERを利用するようになった影響からかBOOK☆WALKERでもあてもなく彷徨っています。まあBOOK☆WALKERに関してはセール対象作品を眺めていくって感じですかね。

 で、そういったあてもなく彷徨って本を見つけてくるいつもの行動のときに、たまたまライト文芸系の作品を見ていたのですが、表紙の感じが一見「あーよくあるライト文芸だなー」と思ったのもつかの間、表紙に書かれている作者名を見て「ん?」と違和感を覚え、書籍の詳細を見て「まさかの!?」と驚き、半ば衝動買いをした本を今回読みました。タイトルは『この青い空で君をつつもう』です。

  基本的な書籍情報。

  著者:瀬名 秀明

 『この青い空で君をつつもう』

  双葉社 双葉文庫より出版

  刊行日:2020/3/11

  あらすじ

 高校の美術部に所属する早季子は、クリスマス・イヴの朝、自分の宛名のみが書かれたはがきを手にする。翌朝、早季子は信じがたい光景を目にする。机に置いてあったはがきが折り紙のように「猿」の形に折られていたのだった。早季子にはその「猿」に見覚えがあった。一〇カ月前に亡くなった同級生、和志が折った「猿」ではないか…。―なくしたことから始まる力強い未来。瑞々しい希望が溢れる青春ラブストーリー。

 この作品の作者、瀬名秀明といえば、デビュー作にして代表作でもある名作SFホラー『パラサイト・イヴ』の作者であります。

 自分も最初作者名を見たとき「え? 本物?」と思い、作者の著作一覧など調べてみたのですが、ちゃんと『パラサイト・イヴ』とこの『この青い空で君をつつもう』が同じ一覧に並んでいました。そして実際に書籍を購入して収録されている作者紹介欄においても代表作『パラサイト・イヴ』と書かれていましたので、この一見ただのライト文芸にしか見えない小説の作者は紛うことなく『パラサイト・イヴ』の瀬名秀明であるみたいです。

『パラサイト・イヴ』といえば小説としても有名ですが、実は結構メディアミックスをしており、実写映画をはじめコミカライズもされており、さらには確かプレステでゲームにもなっていたはず。『バイオハザード』とか『クロックタワー』みたいな感じのアクションホラーゲームで、確か続編の『パラサイト・イヴ2』もあったような気がします。もちろん小説が原案になっているのですが、個人的に『パラサイト・イヴ』と聞くとゲームの方の印象が強いですね。

 そういった事情により、「小説を読んだことはなくともタイトルだけなら聞いたことがある」という方は多いのではないでしょうか。自分も実際に小説『パラサイト・イヴ』を読んだことはないのですが、名作故に作品の評判をよく耳にして、なぜか読んでもいないのにあらすじだけはなんとなく把握している作品、というのが自分の中での位置感だったりします。

 あと作者本人に関しては、以前NHK Eテレの教養番組『100分de名著』のアーサー・C・クラーク回で解説をしていたのを見たこととか、あとSF作家クラブでいざこざがあったというゴシップを聞いたことがあるといった程度ですかね。著作を読んでいないのに作者本人はいろいろと目にする機会が多い気がします。

 そんなこんなで自分としては初瀬名作品が意外過ぎるライト文芸ものであるのは、正直どうなんだろうとは思いましたが、せっかく買ったのでちゃんと読みました。

 内容としてはまさに近年よくある青春ライト文芸といったもの。決してパラサイトな感じではないです。ホラー要素皆無。基本主人公である女子高生の視点で、病気で亡くなった同級生の男子への想いを抱きつつも不思議な出来事が起きる、というものです。

 とはいえライト文芸によくあるような言葉通りの少し不思議ファンタジーかと思いきや、後半でまさかのサイエンス要素が登場して、作中で起こった不思議をちゃんと説明しているところをみると、ファンタジーな不思議に納めていない話だったという感想を抱きました。

 でもSF的な意味でのすこしふしぎとするにはリアリティがあり過ぎるというか、サイエンス・フィクションというよりは科学描写がある現代ものという感じで、SF作品かと言えれるとSFらしさはそこまでないといったところ。

 まさにSF作家が書いた青春ライト文芸という感じですかね。

 これ……出版社が双葉社で双葉文庫でしょ。双葉文庫ですぐ出てくる作品が『君の膵臓をたべたい』とかなので、もしかしたら担当編集から「『キミスイ』みたいなの書いて」ってリクエストされたのではないかと、勝手に妄想しました。もしくは「『君の名は。』みたいの書いて」とか。

 それくらいにやっぱ意外性がありましたね。

 そうそう、ライト文芸的に読むと、この作品では折り紙を題材にした内容になっており、その折り紙描写がすごく細かい。折り紙描写以外でも風景とか視点とかの空気感を表現する描写もかなり細かく、ある種の文学的な立体感があったような気がしました。とはいえこれは個人的なことなのですが、割とせっかちな性格をしている自分としては描写が長すぎて「早う話を進めてくれよ……」と読みながら思ったのはここだけの話。結構ページ数のある長い物語なのですが、多分話をフローチャートにしたらそこまで長くはならないのではと密かに思ったり。

 という感じで、SF作家 瀬名秀明による青春ライト文芸作品『この青い空で君をつつもう』でしたが、なんでしょう、「この作者さんはこういう作風も書けるのかー」という発見をした一冊になりましたね。おそらく瀬名作品の中では異色な作品かと思いますが、初瀬名作品となりました。

 ということで、『この青い空で君をつつもう』の感想でした。

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