【小説】『恋する寄生虫』を読みました。まさかタイトル通りだったとは……恐れ入った

※この記事は、小説投稿サイト「カクヨム」にて2019年4月26日に公開されたものを一部修正して転載しています。

カクヨム版

https://kakuyomu.jp/works/1177354054886711486/episodes/1177354054889355689

 三秋縋作品は『スターティング・オーヴァー』と『三日間の幸福』以来の、今回で三作品目となります。

 以前からタイトルと表紙のイラストが気になっており、Amazonのほしい物リストに入れたまま……随分と時間が経ちました。いや決して忘れていたわけではなく、ただ単に積読していただけです。ええ、自分購入後に積読することもありますが、同様に購入前で既に積読しているものがあります……。まあいい加減読まなきゃと思い、この機会に読んでみました。

 基本的な書籍情報。

  著者:三秋 縋

 『恋する寄生虫』

  KADOKAWA メディアワークス文庫より出版

  刊行日:2016/9/24

  あらすじ(KADOKAWAページより転載)

 何から何までまともではなくて、しかし、紛れもなくそれは恋だった。「ねえ、高坂さんは、こんな風に考えたことはない? 自分はこのまま、誰と愛し合うこともなく死んでいくんじゃないか。自分が死んだとき、涙を流してくれる人間は一人もいないんじゃないか」失業中の青年・高坂賢吾と不登校の少女・佐薙ひじり。一見何もかもが噛み合わない二人は、社会復帰に向けてリハビリを共に行う中で惹かれ合い、やがて恋に落ちる。しかし、幸福な日々はそう長くは続かなかった。彼らは知らずにいた。二人の恋が、<虫>によってもたらされた「操り人形の恋」に過ぎないことを――。

 タイトルと表紙に惹かれて購入したため、自分あらすじを読まずにいきなり読み始めたのですが、いやまさかタイトルそのままな内容だったとは!?

『恋する寄生虫』というタイトルですから最初、比喩的に相手に依存しちゃう系の恋愛小説だと思っていたのですが、読み進めていくにつれてガッツリ寄生虫の話が出てきまして、物語の中盤辺りになってから自分の早とちりに気がつきました。読み終わってから裏のあらすじ読んだら普通に書いてあるし! というかこのあらすじネタバレじゃね?

 ただあらすじを読まずに読んだおかげか、この寄生虫に関するネタは意外性があって純粋に楽しめました。そして寄生虫ネタを生かした独自の設定や、また寄生虫ネタをうまいこと伏線として機能させて物語に起伏を持たせるなど、「寄生虫」というキーワードを巧みに使いこなしたストーリーでした。

 この寄生虫に関するネタですが、ある種ペダンチックに語られており、また寄生虫を活用した設定や伏線などの点を見ていくと、ある意味ではSFっぽい作品に仕上がっている印象を受けました。というか自分は後半から完全にSF作品として読んでいました。寄生虫の生態的な部分からのアプローチで描かれた広義的なSFといったところでしょうか。

 ただこの「広義的なSF」というのは決してサイエンス・フィクションとしての程度が低いという意味ではなく、サイエンス・フィクション以外の要素が強く出ている内容で、わざわざSFを押し出してアピールしなくてもいい、というものです。

 仮にこの『恋する寄生虫』が小説投稿サイト「カクヨム」で公式連載されることになったら、ジャンルは「SF」ではなく「恋愛」か「現代ドラマ」にした方が読者層としては合致するのではないかと。そういう観点から、SF作品だけどあまりSFを意識しなくても楽しく読めてしまう作品といったところでしょうかね。

 自分は途中からSFとして読んでいましたが、普通に恋物語としてや人間ドラマとしての本来の楽しみ方でも面白く感じるかと思います。というか普通に面白い小説でした。

 さて、作者の三秋氏は、以前「げんふうけい」名義で作品をネット公開していました。デビュー作となった『スターティング・オーヴァー』はネット公開時『十年巻き戻って、十歳からやり直した感想』でしたし、代表作『三日間の幸福』の原題は『寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。』です。

 今回読んだ『恋する寄生虫』は書きおろし作品となりますので、商業作家としてデビューした後に書かれた作品です。

『スターティング・オーヴァー』及び『三日間の幸福』は、まーあくの強い作風でして、主人公がとにかくネガティブで、その主人公を他の登場人物で追い詰めていく感じであり、終止鬱々した内容です。ただこのネガティブで鬱々した作風がある種の皮肉を描いているように捉えることができ、重たく決して明るい物語ではないにも関わらずどこか心に響いてくる何かがあります。またそうした暗い話ではありますが、最後の最後で一応のハッピーエンドに辿り着く構成は独特のカタルシスを得られ、読後感としてはこの上なく素晴らしい感覚となります。このあたりが三秋作品の魅力の部分ではないでしょうか

 では今回の『恋する寄生虫』はどうなのかというと、『スターティング・オーヴァー』や『三日間の幸福』と比べるとあくの強さが抑えられている印象です。もちろん主人公は鬱々したキャラクター性であり、物語全体としても明るい話ではないところはこれまでの作風と同じですが、しかしこの『恋する寄生虫』には『スターティング・オーヴァー』や『三日間の幸福』にはない読みやすさがあったように思えます(『スターティング・オーヴァー』と『三日間の幸福』も読みやすい小説ではあります)。

 こういった作風をコントロールして読みやすさを向上させたのは、思うにプロの作家として商業で経験を積んだことが影響しているかと。つまりは成長であり、作家性として『スターティング・オーヴァー』や『三日間の幸福』から格段に進化していると感じました。

 一方で『スターティング・オーヴァー』や『三日間の幸福』のような強烈な個性が抑えられてしまった印象も抱きましたので、言い方は悪いですが「作風として劣化してない?」となんとなく感じてしまった部分もあります。

 もちろん作者の作風が変化するのは当然のことです。昔の作品と今の作品は明らかに別物の作風になっているはずです。そのことは理解しているつもりですが、うーむ……個人的には以前のような鬱々したどぎついネガティブ小説を読みたかった。

 いや別に『恋する寄生虫』が駄作というわけではなく、むしろ傑作だと思っています。ただこれまでの作品とは違ったアプローチをされた作品だったので、自分としてはかなり意外だったという感想を持ちました。

 この作者さんはこういったお話も書けるのかー、という発見もあった作品でしたね。

 これを機に三秋縋作品を読み漁ろうかしら? 

 どうやら『恋する寄生虫』は比較的新しい作品のようなので、著作を遡る感じで読んでいきたいですね。……そうやってまた購入前積読が増えていくのですけどね。

 もし「これは読んだ方がいい!」というタイトルがありましたら、情報お願いします。

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