【小説】『夢にみるのは、きみの夢』を読みました。この内容をガガガ文庫でやるのか?

 前回は、電子書籍サイト「BOOK☆WALKER」で以前開催されていたガガガ文庫セールで購入した『ミモザの告白』の感想でしたが、せっかくのセールということでガガガ文庫作品を手あたり次第(とりあえずSF要素がありそうなもの)まとめ買いしまして、今回もセールで買ったものを読みました。

 ……が、正直この作品微妙過ぎていろいろと言いたいことがある。ただまあ酷評にならない程度に頑張って感想を書きたい。

  書籍情報

  著者:三田 麻央

 『夢にみるのは、きみの夢』

  小学館 ガガガ文庫より出版

  刊行日:2021/4/20

  あらすじ

 恋愛経験ゼロの女子、AI男子と同居する。二橋美琴は乙女ゲームが趣味のオタクOL。これまで友人がいたことがなく二次元の世界に浸りきった彼女の生き甲斐といったら、推しのイケメンキャラ・金堂町先輩に貢ぐことくらい。そんな彼女に、生まれて初めて三次元で胸のときめきを覚える相手が現れた。同じ会社の先輩、佐々木優吾だ。25歳の誕生日の朝、テレビで見た「今日の運勢」で自分の星座がランキング一位だったことに運命を感じた美琴は、思いきって佐々木先輩に話しかけてみようとする……が、あえなく玉砕。その日の深夜、飲めないお酒を買い込み、一人荒ぶりながら公園でお花見をしている美琴のもとへ、金色の髪を持つ美しい青年が現れる。転んで怪我した美琴の手当をしてくれたり、気さくな会話で楽しませてくれる青年。だが、彼には明らかに怪しい点があった。自分を研究所から逃げてきたAIロボットだと言うのだ。しばらくのあいだ自分を匿ってほしいとお願いされた美琴は、その場から逃走。ところが、青年の言っていることは全て事実であることが判明して……。恋愛経験ゼロ女子と、AIロボット男子との泣き笑いの同居恋愛ドラマ。タレントとして活躍する三田麻央、初の書き下ろし長編ライトノベル。

 まずはじめに、自分はこの作品の作者の情報を全く知らないまま読み始めました。

 個人的な信条ですけど、作者の属性が作品の印象に影響を及ぼすべきではない、と考えております。作者の個人的な思想や生い立ちなどを知ってしまうと、作品単体で読み解くことができなくなってしまうからです。文学的にはもちろん作者の人物像から作品の解釈を深めることもあります。しかしながら自分としては、それは読後もしくは二回目の読書でするべきものであって、初めて読む際は限りなく作者の情報を遮断したうえで可能な限りフラットな視点で読むようにしています。一度知ってしまえば知る前に戻れないわけですし、作者の情報はある意味作品のネタバレと同等だと思っています。

 以前この書き物でも書いたような気がしますが、自分としては、興味があるのはあくまで作品であって作者ではない、という気持ちがあります。もちろん自分も好きな作家さんとかいますが、それでも新作を読む際は一度ファンであることをやめたうえで作品を読み読後改めてファンになる、という徹底したスタンスで作品に触れています。

 とにもかくにも、初めて読む作品にとって作者の情報はノイズでしかないと思っています。

 そういった信条のもと、今回『夢にみるのは、きみの夢』という作品を読みまして、まずは作者のことを全く知らないまま読んだ感想から。

 忌憚なく感想を述べるとすると、この作品は本編の九割ほどが出来の悪い素人のケータイ小説レベルの内容で辟易した、というものです。

 あらすじでAI男子が登場すると書かれていましたので、ロボットが登場する恋愛SFみたいな内容なのだろう、というのが第一印象で、確かにその通りの恋愛SF作品でした(実はあらすじをちゃんと読んでいない)。

 が、前述通り中身は出来の悪い素人のケータイ小説レベルでして、読み応えが全くない薄っぺらいドラマが展開するだけ。伏線とかもあからさま過ぎて容易に先の展開が読めてしまう。社会人ものであるがその社会人像がまるで学生が想像した程度の浅さ。幸い文章はスッキリしていて読みやすいが、それも読み応えのなさからくるものであり、流し読みをしても充分内容を把握できてしまえるほどの中身のなさ。

 別にケータイ小説を否定するつもりはありませんが、しかしながらこの内容の小説を出しているのが、あろうことが小学館のライトノベルレーベルであるガガガ文庫なのが問題。少女向けライトノベルであればいいのですが、ガガガ文庫って少年向けではなかろうか?

 これはKADOKAWA系でたとえるならば、角川ビーンズ文庫でやるような内容を角川スニーカー文庫から出版するくらいにターゲット層がちぐはぐ。あるいは週刊少年ジャンプに少女漫画を連載したり、深夜アニメの放送の間に月9みたいなテレビドラマを挟んだり、みたいな感じ。作品の内容と発表媒体が致命的に合っておらず、実際に読みながら「これ……ガガガ文庫だよな?」と疑いました。

 ただまああえてよかった点をあげるとすると、ラスト一割のSFパートは意外性があってよかったです。SFとしては細かいところが気になりましたが(高度AIやロボットが存在しているような近未来において当然のように登場するスマホや、上司に提出する報告書がなぜか紙媒体であるなど)、まあそれまでの酷さに比べれば可愛いものです。またこの一割SFパートによって本編九割を占める出来の悪い素人のケータイ小説レベルの内容も、あくまで演出として書かれたものであることがわかるので、このあたりのひと工夫はいいと思いました。とはいえさすがにあの九割の出来の悪い素人のケータイ小説レベルの内容が長すぎて読むのが苦痛でしたけど。この作品、アイディアとしてはむしろ短編小説向きではなかろうか。短編であれば面白かったかも。

 総評として、これガガガ文庫でやるような内容じゃない。いくらなんでもありがレーベルカラーのガガガ文庫であっても、さすがにこれはなしでしょ。ライトノベルとはいえ文芸作品であることには変わりないのですから、小説として程度が低すぎると言わざるを得ません。

 と、ここまでが作者の情報を知らないまま読んだ際の感想です。

 巻末に掲載されているあとがきやプロフィールを読むに、この作者さんどうやら元アイドルのタレントであるらしく、小説もこれが初めて書いた作品であるようです。

 そういった作者の情報を読後に知ったことで、作品に対してある程度納得しました。

 言うなれば、たとえばアニメ映画に起用されるタレントみたいに、捉え方によっては悪くはないのかもしれないが下積み時代を経た本職と比べると圧倒的に技量が足りてない、という感じでしょうか。

 まあ初めて書いた小説であればよく書けていると思います。あくまでよく書けている程度ですが、よくある素人の処女作と比べると書き物として普通に読めるので、そういった意味であれば悪くない作品かもしれません。

 それにこういった著名人が挑戦する作品って、あくまでファンアイテムとしての意味合いがあるかと思います。もう一定数のファンがついていて売れる見込みがあるわけですから、何が書かれている作品かよりも誰が書いた作品なのかの方が重要なんだと思います。

 とはいえ、いちフィクション愛好家としては、「誰が書いた作品なのか」よりも「何が書かれた作品なのか」の方が大事だと思っています。それに最初に述べた信条故に興味があるのは作者ではなくあくまで作品なので、こういった著者ありきの作品は好きではないし、受け入れ難い。

 ただまああくまでファンアイテム的な作品であるわけですから、ファンの方が楽しめればそれでいいんじゃないですかね。

 少なくともこの『夢にみるのは、きみの夢』という作品は、自分みたいなタイプの読者とは相性が最悪だった、ということなのでしょう。むしろタレント小説だからこそ読後に納得することができましたが、これ普通に無名の新人作家が書いたとしたら失望を通り越して殺意を抱くくらい酷い作品だったので、まあこれはこれでよかったのかもしれませんね。

 という感じで、なるべく酷評にならないように感想を書いた、『夢にみるのは、きみの夢』でした。

 ちなみにですけど、セールで買ったガガガ文庫作品がまだありますので、しばらくガガガ文庫ばかりの感想になりそうです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。