【小説】『ヒトの時代は終わったけれど、それでもお腹は減りますか?』を読みました。電撃文庫の百合SF!

 近年勢いを増しているもののやっぱりニッチなジャンルといえば、そう、百合SFです。二年くらい前に早川書房のSFマガジンで百合特集したあたりから百合SFが注目されたような気がしまして、発端となった早川書房ではハヤカワ文庫JAで百合SFアンソロジーを出したくらいです。

 百合SFといえば早川書房で、他といえば小学館ガガガ文庫で百合SFが受賞したり、あとは漫画やアニメ作品がいくつかあったりといったところでしょうか。ですがまさに二年くらい前に電撃文庫でも百合SFを出していたようで、ちょっと惹かれる感覚で読んでみました。タイトルは『ヒトの時代は終わったけれど、それでもお腹は減りますか?』。

  基本的な書籍情報。

  著者:新 八角

 『ヒトの時代は終わったけれど、それでもお腹は減りますか?』

  KADOKAWA 電撃文庫より出版

  刊行日:2019/3/9

  あらすじ

 荒廃した24世紀の東京は合成食糧や電子ドラッグが巷に溢れ、荒くれ者たちが鎬を削る…それでも、やっぱりお腹は減るんです。日々の戦いに疲れたら、奇蹟の食堂―“伽藍堂”へ!厨房を受け持つのは「食の博物館」の異名を持ち、天使の微笑みをたたえる少女ウカ。狩人兼給仕を担うのは、無法者に睨みを利かせる、こわもて奔放娘リコ。二人は今日も未知なる食材求めて、てんやわんやの大騒ぎ。「おいしい!」の笑顔のためならば、人を喰らうドラゴンから、食べたら即死の毒キノコ、はたまた棄てられた戦車まで!?なんでもおいしく、そして仲良くいただきます!リコとウカの風味絶佳な日常を皆さんどうぞ召し上がれ。

 ジャンルとしては百合でSFでグルメなライトノベルです。……まあ要素てんこ盛りですね。

 流行りである百合を取り入れた作品ですが、実際に読んでみるとそこまで過激な百合ではないといったところ。それこそ性描写ありの攻めたガールズラブというわけではなく、むしろまんがタイムきららあたりを原作にした美少女アニメで視聴者が勝手に尊さを感じ取って百合認定するくらいの百合感かも。

 友愛的な信頼関係はあるものの、キスするとかの恋愛感情としての関係ではない感じ。同じ電撃文庫でいえば、拗らせてない『安達としまむら』といった具合。もしかしたら人によっては百合作品なのかそうではないのか意見が分かれる程度の百合といったところでしょうか。狭義の百合ファンにとってはファッション百合と言うかもしれませんが、一方でこういった低刺激は百合に馴染みのない方でも楽しめるのではないでしょうか。

 とはいえ自分なんかは「女の子が二人いればそれだけで百合!」と主張しているくらいですから、この作品も充分に百合百合していると思いますけどね。尊いことには間違いない。

 SFとしては、結構興味深い設定で面白いといったところ。

 SF的には所謂ポストアポカリプスに分類される作品。簡潔に説明すると、大戦で使われていた薬物、新陳代謝や肉体再生を向上させる薬が、接種した人間に蚊や寄生虫などが接触したことで自然界に流出し、動植物が爆発的に大繁殖で人類の文明が衰退した、というザックリ言うとこんな感じ。

 これら世界設定などの構造や独自のワード、そして科学的解釈などなど、SFとしての面白さが十二分に描かれており、SFファンとしてはたまらないものになっています。とはいえ出しているレーベルが電撃文庫ですので、あくまでライトノベルに収まるように描写を柔らかくしていて、ガチガチのハードSFのような難しさは微塵もなく、SF初心者でも楽しめる内容になっています。このあたりはまさにラノベSFらしさがあるといったところですね。

 そしてこういったSF要素を活かしたのが本筋のグルメ要素。薬物流出によって巨大化や超進化をした動植物を狩って調理するという流れで、あらすじにもありますけど、進化異常でむしろ先祖返りしたトカゲ&鳥のガチ恐竜に、大戦中に投入された自律兵器に使われている人工筋肉など、「それ食うのか!?」といったものを食材にグルメするというお話になります。

 こういったSFならではのグルメはアイディア次第でいくらでもオリジナリティが出てきて飽きがこない感覚がありますね。この『ヒトの時代は終わったけれど、それでもお腹は減りますか?』という作品は一本の長編作品というよりはいくつものエピソードを並べた連作短編作品なのですが、次のエピソードで一体どんな食材でどんな調理をするのかといった期待が自然と湧いてくるものがありました。

 まあグルメ作品としてどうなのかという感想は、正直に言えば自分にはできないので省きます。

 個人的なことなのですけど、自分は割と食に興味がない人間でして、最低限の飲食しかしない傾向があります。たとえばおいしいラーメン屋に並んでまで食べなくてもカップラーメンあるでしょとか、わざわざカフェで高いコーヒー注文するくらいなら缶コーヒーでいいじゃん、といった感じ。食べ物の好き嫌いはあるけど「おいしい」という感覚が実はよくわからなく、口の中入ってちゃんと栄養になるなら何食べても一緒でしょ、というのが自分の考えであります。

 なんでしょう、食のミニマリズム、といえばいいのですかね。スティーブ・ジョブズが何着も同じ服を用意して毎日着る、みたいなことの食事版といえばわかりやすいかもしれませんね。(まあ服もジョブズみたいなミニマム傾向ありますけど)

 毎回献立を考えてスーパーに買い出し行って調理して食べて後片付けをするって、正直面倒くさいしその時間がもったいないじゃないですか。それなら手軽に食べられるものを食べたいのです。理想を言えば、これさえ食べれば栄養に困らないって感じのディストピア飯を毎食食べたいくらいです。

 そのため今回このSFグルメ作品『ヒトの時代は終わったけれど、それでもお腹は減りますか?』を読んでも、調理シーンとかは「面倒くせぇなー」と思うくらいですし、食事シーンでおいしそうに食べていても「ふーん……」くらいであんまりピンと来ないのです。

 まあこれは完全に自分の感覚が悪いのであって作品のせいではないのですけどね。そもそも自分がこういう人間なのでグルメ作品全般が楽しめないのですけどね。ならなぜ読んだのかというと、単純に百合SFだったからです。

 グルメ作品としてはよくわからないけど百合SFとして楽しめた、というのが今回の感想になります。ハイ。

 ということで百合SFグルメライトノベル『ヒトの時代は終わったけれど、それでもお腹は減りますか?』でした。

 自分とは違ってちゃんと食事を楽しむことができる方の感想が気になるので、ちょっと調べてみようと思います。

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