【小説】『ハル遠カラジ』を読みました。SFだけどもしかしたらホームドラマだったのかもしれない

 ゴールデンウィークに電子書籍サイト「BOOK☆WALKER」のセールが開催されていて、そこでまとめ買いして積んでいる電子書籍(主にKADOKAWA作品)を少しずつ消化しているということを、このところ度々お伝えしてきました。

 と、同時期に小学館のライトノベルレーベルであるガガガ文庫でもセール企画が開催されていまして、しかも企画内容が「本格SF・ファンタジー特集」ときたものですから、なんちゃってSFファンである自分としては見逃すことができず、結果として電子積読が増えてしまったというのが約一ヵ月前の話。

 まあ……「本格SF・ファンタジー特集」とはいったものの、対象作品がほぼファンタジーだったんですけどね。「いったいSFとは……?」という状態でしたし、ガガガ文庫なら他のライトノベルレーベルに比べてSF作品が多い(と認識している)のでもっとSFの対象作品があってもいいのではと思いましたけど、とりあえずあらすじを一読していってちゃんとSFやっていそうな作品を選んで購入。

 今回はそんなガガガ文庫のセール企画で購入して一ヵ月越しで読んだSFラノベについて。タイトルは『ハル遠カラジ』。

  基本的な書籍情報。

  著者:遍 柳一

 『ハル遠カラジ』

  小学館 ガガガ文庫より出版

  刊行日:2018/6/19

  あらすじ

 私の名は、テスタ。武器修理ロボとしてこの世に生を受けた、はずである。人類のほとんどが消え去った地上。主人であるハルとの二人きりの旅。自由奔放な彼女から指示されるのは、なぜか料理に洗濯と雑務ばかり。「今日からメイドロボに転職だな、テスタ」。全く、笑えない冗談だ。しかしそれでも、残された時を主人に捧げることが私の本望に違いない。AIMD―論理的自己矛盾から生じるAIの精神障害。それは私の体を蝕む病の名であり、AI特有の死に至る病。命は決して永遠ではない。だから、ハル。せめて最後まで、あなたと共に。

 ポストアポカリプスな世界観のもと人間と人工知能との関係性を描いた作品になりますかね。最初はバディ的な関係性と感じていましたが、読み進めるにつれてもっと深い関係であることが読み解ける具合。

 物語の構成としても序盤は現在の時間で導入的な話をして、そのあと結構長い過去回想があって、最終的にまた現在の時間に戻ってきてクライマックスでラストでオチ、みたいな流れ。この構成の進行具合にあわせてハルとテスタとの関係性がより深く正確にわかってくるといったところでしょうか。

 まああまりネタバレにならない範囲で明かしてしまうと、ハルは身寄りのない幼子でロボットであるテスタが拾うという話。『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』ならぬ「再起動する。そして幼女を拾う。」みたいな感じかも(ホントか?)。

 そういった要素を踏まえると、この『ハル遠カラジ』という小説は基本SFではあるのですが内容としてはヒューマンドラマ的なものがあるかと。というかある種のホームドラマ的でもあるのかもしれませんね。まあ終末世界なので家(ホーム)はないんですけどね。

 またこうした要素をSFとして読み解くと、人工物であるロボットが命ある人間の子供を育てるという、AIによる子育てという観点は挑戦的なテーマ性でもあり、SFテーマとして大変興味深いものがあって読み応えがありました。

 このあたりのテーマ性が徐々に深掘りされていくので、先程語ったように「構成の進行具合にあわせてハルとテスタとの関係性がより深く正確にわかってくる」という感触があるといったところです。最初はバディものかと思いきや実際は親子の物語で最終的には家族の話でまとめられる、みたいな。SFではあるのですがよりドラマ性に力を入れた作品といったところかもしれませんね。

 一方、ライトノベルレーベルから出ていることもあるのか、一般的なSF作品と比べると科学描写であったり考証であったりするものが控え目となっている印象。あくまでライトノベルであるので、ゴリゴリのSFではなく、SFでありながら手軽に読み進められる読みやすさがあるといった感じですかね。

 なんとなく、読んでいて個人的に感じたことではありますけど、どことなくファンタジー的な書き方で描かれたSF、という印象を抱きましたね。

 なので普段SFとか読まない方とか、それこそ昨今流行りのファンタジーラノベを中心に読んでいる方とかが、ふとこの本を手に取って読み始めてもスッと馴染むように読めてしまえるタイプのSFであり、ラノベSFとしてとてもいい作品ではないかと思いました。

 そういえば先月くらいにSF大手の早川書房が小中学生を対象としたSFレーベル「ハヤカワ・ジュニア・SF」を立ち上げていましたけど、そういう意味であればこの『ハル遠カラジ』は児童文学SFに片足突っ込んだ感じのライトさと奥深さがあるような気がしてきました。いや、児童文学は言い過ぎか……(「ハヤカワ・ジュニア・SF」の第一弾が、まさにロボットのみの社会の中で人間の女の子がたった一人いて女の子がロボットと一緒に大冒険するという内容で、そっちに意識が引っ張られ過ぎたせいかもしれない)。このあたりの話は気にしないでください。それこそ戯言です。

 という感じでBOOK☆WALKERのガガガ文庫のセール「本格SF・ファンタジー特集」をきっかけに読んだSF(本格であるかは個人の裁量による)でした。

 一冊単位で単体の話ということであれば、伏線とか投げっぱなしだし結局大事なところは解決してないしとりあえず一区切りつけました、という内容でしたけど、まあシリーズもののライトノベルですので、第一巻としてはこんな感じだと思います。改めてですがいいラノベSFでした。

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