【小説】『これは学園ラブコメです。』を読みました。なんだコレ!? とんでもねぇキチ〇イラノベだ!

※この記事は、小説投稿サイト「カクヨム」にて2019年5月3日に公開されたものを一部修正して転載しています。

カクヨム版

https://kakuyomu.jp/works/1177354054886711486/episodes/1177354054889437452

 草野原々によるライトノベル作品『これは学園ラブコメです。』を読んだのですが……まず一言に、

 こ れ は ヒ ド イ !!

 今までにない、とんでもない衝撃作を読んで興奮してます。というわけでまずは紹介。

 基本的な書籍情報。

  著者:草野 原々

 『これは学園ラブコメです。』

  小学館 ガガガ文庫より出版

  刊行日:2019/4/18

  あらすじ

 これは学園ラブコメなんですか?俺の人生、なんだかラブコメみたいだな。主人公である高城圭はそう思った――。そうだ! お前はラブコメの主人公であり、SFとかファンタジーとかそんなジャンルのキャラではない! だから大人しくラブコメらしい展開に従ってくれえええ! 嘆くその影は言及塔まどかこと、虚構を司る力が擬人化された存在。そう、これは、まどかと圭が七転八倒しながらラブコメの世界をSFやらファンタジーの浸食から守り抜く物語。SF界の超新星が描く、ハイテンション×メタフィクション学園ラブコメ開幕!って、俺の高校生活、一体どうなっちゃうの~~!?

 まずは作者である草野原々について簡単に紹介。

 2016年に、『ラブライブ!』の二次創作小説『最後にして最初の矢澤』を改稿改題した『最後にして最初のアイドル』が第4回ハヤカワSFコンテストで特別賞を受賞し、受賞作が電子書籍として配信されたことにより商業作家としてデビュー。翌年『最後にして最初のアイドル』が第48回星雲賞日本短編部門を受賞。デビュー作での星雲賞受賞は42年ぶりの快挙となる。18年にデビュー作の他に2編を収録した作品集『最後にして最初のアイドル』をハヤカワ文庫JAより出版。同作は第39回日本SF大賞の最終候補作に選出される。名実ともに国内SFの期待の新人。

 ……という、今SF界で最も注目されている作家さんが、まさかのラノベ参戦です。しかも早川書房での新作『大進化どうぶつデスゲーム』と同時刊行。早川書房と小学館が出版社の垣根を越えてキャンペーンするなど、予想を大きく飛び越えて活動されています。

 そんなわけですから……読まないわけにはいかないでしょ!

 というか一体どんなラノベを書くのかものすごく気になる!

 ……といった感じで、早速読んでみました。

 内容は……すごかった(小並感)。

 何がすごいって、あまりにも内容が酷すぎて度肝を抜きました。いやこれ誉め言葉です。

 この作品はあらすじに書いてある通り基本ラブコメなのですが、メタフィクションとしてラブコメをいじり倒していくスタイルで、しかも途中ではファンタジーやSFやミステリーやホラーといったラブコメと全く関係ないジャンルが侵食してきてラブコメ世界が大惨事になっていく!みたいなコメディ作品です。

 これら異なるジャンルの要素を矢継ぎ早にぶち込んでいくので、当然整合性はとれていません。矛盾&矛盾でゴリ押ししてくるので内容としては意味不明です。

 どのくらい意味不明なのかは実際に読んでいただかないと伝わらなと思いますので、ここで初めてジャンルが侵食してきたシーンを引用として書きます。物語としては序盤ですので、意味不明度としては軽度。ジャブです。

(『これは学園ラブコメです。』本文より引用)

 まどかは圭の手を握り、席を立った。だが、亀の赤子に足を取られてつまずいてしまう。

 バスの後方座席は亀の養殖場だったのだ。このバスは、国連事務総長からゾウリムシまで三十五種におよぶ動物を育成している世界でも有数の施設だ。

 亀の赤子は、そのなかでも一番貴重なものである。

(中略)

 まどかはバスの窓を割った。ここの窓は、亀の赤子に次ぐ貴重な天然資源だ。あまりのも貴重なので、国有になっている。

 その窓を割ってしまうと、おサムライさんたちが天誅にきちゃうのだ。文部科学省から派遣されるのだ。

「であえ、であえ!」

 サムライのお頭がやってきた。サムライは、とても尖ったいろいろなものを武器として持っていた。とても尖ったリュック。とても尖った植木鉢。とても尖った本棚。とても尖った遠洋漁業船。とても尖った口。とても尖った球体。とても尖った赤紫色。とても尖ったトガリネズミ。

 ――引用ここまで――

 こんな感じです。ですがこれはあくまでジャブとしての意味不明さです。ページが進むにつれてこの意味不明さが加速度的に増していき、しまいには日本語としての文章そのものが崩壊していくといったレベルに達します。読んでいると「自分は一体何を読んでいるのだろうか……」といった謎の感覚に陥っていきます。一種の前衛文学?

 そしてその意味不明と同時にラブコメとして、ひいては物語としてのメタフィクションで悪意を持っていじり倒していくため最早収拾がつかない状態になっていきます。なんでもありの無茶苦茶な内容で唖然とするばかり。

 さらには地の文までもが好き放題に暴れ出してきます。この作品は基本的に三人称で書かれているのですが、とあるシーンでは地の文が自我に目覚めて暴走し、登場人物VS地の文といった構図になり輪をかけてカオスな様相を呈します。

 加え作者のあとがきもストーリーを進める要素として活用されています。ピンチを打開する反則級の切り札として「あとがき」を使っていく斬新さ。あとがきというくらいですから本来なら本編が終わって作品の最後に書かれているはずのものですが、この作品に至ってはこのような仕掛けがあるため、作者のガチのあとがきが本編中に書かれているという始末。最早小説としての常識を逸脱した暴挙っぷり。

 そしてしまいにはアウトなパロディネタ。一応伏字にはなっていますが人気ラノベタイトルがそのまま登場します(他社作品も問わず)。

 その他行き過ぎたフォント加工などなど、全体を見ていくとあまりにも酷い内容でたいへん素晴らしいです(歓喜!)

 デビュー作が収録されている短編集『最後にして最初のアイドル』(ハヤカワ文庫JA)の最後に書かれている解説(解説者:前島賢)に「悪いオタク」という言葉が出てきます。

 この「悪いオタク」というのを要約しますと、

 可愛い女の子をこよなく愛していると同時にSFやミステリーなどといった別ジャンルにも愛を注いでおり、さらにより専門的な教育を受けている者も珍しくないが、「悪いオタク」の悪いところは、本来各ジャンルごとに受容すればいいそれを隙あらば融合させようと企んでいるとこにある、といった具合です。

 そして解説では、「悪いオタク」の「大喜利」の延長線上にあるが草野原々の「悪さ」はちょっと常軌を逸している、いたずらで終わらせてしまうそれを本気で「実行」してしまう極悪人、と書かれています。

 そういうことであればデビュー作『最後にして最初のアイドル』はまさに「悪いオタク」が書いたバカSFであり、そして今回読んだ『これは学園ラブコメです。』は紛うことなく「悪いオタク」が書いたバカラノベだった。

『これは学園ラブコメです。』は冗談小説に留まらない、最早ただの悪ふざけでしかない文字の塊です。ですがそんな悪ふざけを最後までやり切っているからこそ感じることのできる衝撃がありました。近年稀に見る問題作ではないでしょうか。

 なんかね、コレ、ガガガ文庫×草野原々だからこそ出版できた作品だと思います。昔あったガガガ文庫のキャッチコピー「ガガガがやらなきゃ誰がやる!」をそのまま物語にした作品でしたね。

 つまりは、ただのキチ〇イラノベでした!

 この『これは学園ラブコメです。』は癖が強すぎて人にはオススメできない小説ですが(最早小説という枠をはみ出している何か)、これから読まれる方は小説だと思わずただの文字の塊であることを意識しながら読むといいと思います。あ、コレもちろん誉め言葉ですよ。

 今回改めて草野原々の才能の怖さを認識しました。

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