【小説】『氷の国のアマリリス』を読みました。こりゃあたまらねぇ! 女性受けもしそうな感動系SF!

※この記事は、小説投稿サイト「カクヨム」にて2019年2月1日に公開されたものを一部修正して転載しています。

カクヨム版

https://kakuyomu.jp/works/1177354054886711486/episodes/1177354054888376324

 

 冬真っ盛りの今、たまたま季節感がピッタリな作品を読みましたので、今回はその話題。タイトルは『氷の国のアマリリス』です。

  基本的な書籍情報。

  著者:松山 剛

 『氷の国のアマリリス』

  KADOKAWA 電撃文庫より出版

  刊行日:2013/4/10

  あらすじ

 氷河期が訪れ、全ては氷の下に閉ざされた世界。人類は『白雪姫』という冷凍睡眠施設で眠り続け、そして、それを守るロボットたちが小さな村を形成し、細々と地下での生活を続けていた。副村長の少女ロボット・アマリリスは崩落事故による『白雪姫』の損傷や、年々パーツが劣化する村人たちのケアに心を砕く日々を送っていた。全ては―再び“人間”と共に歩む未来のために。しかしある時、村長の発した言葉に、アマリリスと仲間たちは戦慄する。「―人類は滅亡すべきだと思う」果たしてアマリリスたちが下す決断とは―!?機械たちの『生き方』を描く感動の物語。

 以前、同作者の別作品『雨の日のアイリス』を読んだことがありまして、これがまあースゴイ! 感動系のSF作品なのですが、ガチで読者を泣かせにくる物語で、自分も読みながら突き刺さるものがあまりにも大きく、涙なしではいられない程の傑作でした。

 ……というか確か『雨の日のアイリス』と『氷の国のアマリリス』を同時に買ったことは覚えているのですが、『氷の国のアマリリス』の方は長らく紛失していまして(買ったのに!)、で、今年になって部屋から発掘して今読みました。『雨の日のアイリス』から随分と時間が経過してしまいましたが、まあ『氷の国のアマリリス』も似たような方向性の作品でしたね。

 あらすじに書いてある通り、到来した氷河期から耐え忍ぶために人類は冬眠することにして、その生命維持装置の管理を三百体のロボットで行う世界観。それで人類の真実を知ってしまったロボットたちは、主人である人類を延命させるほどの価値があるのかと疑問に思い決断が迫られる……というお話。

 この「果たしてロボットに人間は必要なのか?」というある種哲学的な問いかけを軸にしたSF作品ですが、まあそこはあくまでライトノベルですので、あからさまな思弁小説ではなく純粋なエンターテインメントとしてのお話になっています。

 人類を存命させるか、それとも人類は滅亡させるべきか、という二択を迫られますが、結局第三の選択を選ぶも……しかし第四の結果になってしまいそう――って感じで、後半はドキドキハラハラ展開で実にライトノベルらしいエンタメ小説でした。

『雨の日のアイリス』もそうなのですが、キャラクター設定等がどことなく童話風であり、その点については『氷の国のアマリリス』も同様です。前半部分は童話っぽい作風を生かした日常的なシーンを多く描いていますが、前述の通り後半から怒涛の展開となり、しかもクライマックスでは九死に一生のサバイバル展開。そして全滅フラグビンビンなところからのハッピーエンドですから、もう心にグッとくるいい話で、読後は半ば放心状態でしたよ。

 ただあまり比べたくはないのですが、感動の度合いとしては『雨の日のアイリス』の方が強かった印象でした。アマリリスは「いい話だなー……」といった具合ですが、一方アイリスの感動は暴風レベルでしたので、同じ感動系でも『氷の国のアマリリス』はきれいにまとまっていた感じはしました。……まあアイリスの思い出補正が強く出てしまっているのは否めないですけどね。

 ですが一方で、SF的な設定の面に注目してみると、『氷の国のアマリリス』の方が深く作り込んでいた印象を受けました。実際に世界がどのような過程を経て氷河期になってしまったのか、そのあたりの世界観の設定が実に興味深く、この設定が明かされるページを見ながらご飯三杯はいけそうなくらいでした。設定厨としてはたまらないッス。

 そういう意味では『雨の日のアイリス』は「SF風な童話」というイメージで、『氷の国のアマリリス』は「童話風なSF」といったところでしょうか。面白いSF設定でしたし、ページ数も400ページ程度となかなかなボリュームでしたので、とても読み応えがあって素晴らしかったです。

 と、SFとして読み応えがあったと言いつつも、科学的な考証は控えめのため難解というわけでもなく、ボリュームはあるもののテンポよく読めてしまうので、ライトなSFものとして読みやすい部類になるかと思います。こういう難解になりがちなSFを読みやすいテイストに仕上げられるのも、ライトノベルとしてのいい面だと感じますね。

 最後まで読んでみて思ったのが、童話っぽい作風に、難解ではない設定、そして涙を誘う感動ストーリーという要素から、この『氷の国のアマリリス』はとても女性的というか、なんか女性受けしそうなSFだったような気がします。

 というか普段からSFとか全然読んでなく「SFって難しそう……」というイメージを抱いている方にこそオススメしたいですね。貴重な入門的ライトSFですよこれ。

(思うのですが、「SFって難しそう……」と思うのは、いきなりハードSFを読んでしまうからではないですかね? SFに挑戦しようとして名作SFに手をつけても、それはコアなSFファンが絶賛しているものであって、古典SFや海外のハードSFを初心者が読むのは無謀なだけかと。ハードSFは個人的に純文学のようなもので、ストーリーよりも設定の芸術性を楽しむものだと思いますから、最初は純粋にエンタメSFから入った方がいいと思いますけどね)

 SFに挑戦してみたいけど難しそうで敬遠している方は読んでみてはいかがですか? あと『雨の日のアイリス』もあわせてどうぞ。

 というか、ああ……『雨の日のアイリス』の記事も書きたいけど、読んだのが随分と前なので、書くのであれば再読しなければなりませんね……。ちょっと今の状態だと思い出補正が強すぎてイカンですよ。でも再読する時間が……。

 まあとにもかくにも、『雨の日のアイリス』を読んでください。以上!(←今回の記事の趣旨と違う!)

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