【小説】『安達としまむら』祝アニメ化! ところで入間先生はいつから百合作家になったの?

※この記事は、小説投稿サイト「カクヨム」にて2019年5月21日に公開されたものを一部修正して転載しています。

カクヨム版

https://kakuyomu.jp/works/1177354054886711486/episodes/1177354054889663767

 近年百合ブームがどんどん加速しているような印象を受けます。

 そしてまた新たに百合作品のアニメ化が発表されました。そうです、あの『安達としまむら』です。

 基本的な書籍情報。

  著者:入間人間

 『安達としまむら』

  KADOKAWA 電撃文庫より出版

  刊行日:2013/3/10

  あらすじ

 体育館の二階。ここが私たちのお決まりの場所だ。今は授業中。当然、こんなとこで授業なんかやっていない。ここで、私としまむらは友達になった。好きなテレビ番組や料理のことを話したり、たまに卓球したり。友情なんてものを育んだ。頭を壁に当てたまま、私は小さく息を吐く。なんだろうこの気持ち。昨日、しまむらとキスをする夢を見た。別に私はそういうあれじゃないのだ。しまむらだってきっと違う。念を押すようだけど、私はそういうあれじゃない。ただ,しまむらが友達という言葉を聞いて、私を最初に思い浮かべてほしい。ただ、それだけ。日常を過ごす、女子高生な私としまむら。その関係が、少しだけ変わる日。

 実はずーと積読していました。で、今月にアニメ化が発表されて「これ原作持ってるやん!」と気付き読み始めました。積読していたらいつの間にか映像化されている、なんてパターンよくあります。

 入間人間といえば『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』や『電波女と青春男』などが有名ですね。またライトノベルだけではなくライト文芸としてメディアワークス文庫からも多くの作品を発表しています。

 個人的に思う入間人間作品の特徴は、やはり一癖も二癖もある登場人物による青春物語でしょうか。頭のおかしいヤバい奴(いい意味で)が登場する一方、真っ当な常識人も中心人物として登場することによって、よりヤバい奴のヤバさが際立つといった具合ですかね。ヤバい奴はヤバい奴で面白いのですが、その非現実的なヤバさに密接するかのような謎のリアリティもあるので、こういったキャラクター造形のセンスがずば抜けている作家さんという印象を抱きます。

 加えて、物語のギミックが秀逸である点も特徴かと思います。とくに印象深いのはメディアワークス文庫から出ている『昨日は彼女も恋してた』『明日も彼女は恋をする』ですかね。こちら上下巻となっているのですが、作品全体としてかなり大掛かりな叙述トリックが用いられています。上巻は普通に読めてしまうのですが、下巻になると物語の見方が一変するどんでん返し。読み終わった後に上巻を読むともう始めから読者を騙す気満々の書き方をされていることに気がついてしまい、また上巻から読み直したくなる作品となっています。また、同じくメディアワークス文庫の『きっと彼女は神様なんかじゃない』もある種叙述トリックが用いられていますが、こちらはストーリーよりも設定面で騙しにくるタイプであり、「そうくるか……」と思わず唸ってしまう仕掛けになっています。入間作品のすべてを読んでいるわけではありませんが、おそらく他の作品も同様のギミックが仕掛けられているのではないでしょうか。

 あと意外性というところでは、入間作品特有のSF要素でしょうか。入間作品では時間を扱った時間SFの作品が多いと思います。先程もあげました『昨日は彼女も恋してた』『明日も彼女は恋をする』も時間SFですし、『きっと彼女は神様なんかじゃない』も時間の流れがポイントになっている作品です。そのほかでは短編集の『時間のおとしもの』であったり『世界の終わりの庭で』も時間SFとして描かれています。『電波女と青春男 SF(すこしふしぎ)版 』もSFらしさが窺える内容になっていたような気がします(記憶が曖昧)。

 自分は、この独特のSF要素を「入間SF」と勝手に呼んでいます。特徴としては、SFですがそこまで小難しい説明描写がされていない点にあります。長々とSF設定を垂れ流すのではなく、SF要素としてはある意味ポピュラーなものをそのまま使っている印象で、どちらかといえばSF要素の使い方の工夫で面白く仕上げているといったところでしょうか。SFって設定的な面白さに魅力がありますが、入間SFは設定よりはストーリーに重点を置いているかと思います。それこそ先程の物語のギミックといったところに、うまいことSF要素を組み込んでいるといった感じですかね。ライトSFとしてとにかく傑作が多い印象です。

 そんな「センスある登場人物」「物語のギミック」「入間SF」といった特徴のある作家さんですが、今回アニメ化が発表された『安達としまむら』は、そういった特徴をすべて削ぎ落している作品で、入間人間作品の中でも(すべて読破していませんが)特異なタイトルなのではと思っています。

 頭のおかしい奴は出てきません。いや出てくるけどそのキャラは脇役です。あくまで普通の女子高生の安達としまむらのお話になります。ただしキャラクターは妙に個性的です。

 物語にギミックなんてものはないです。これといった事件が発生するわけでもなく、あくまで普通の女子高生二人の生活をゆるーく描いているだけの作品です。物語としては刺激が少ないですが、一方で安定安心して読むことができます。

 SF? そんなのあるわけがない。いやないわけではないですけど、それは頭のおかしい奴がすこしふしぎなだけです。

 この『安達としまむら』という作品を一言で表すと、

 と に か く 安 達 が 可 愛 い ! !

 という感じに落ち着きます。百合的に安達が尊すぎて悶絶します。

 そうそう、作者の入間氏は、なんだかいつの間にか百合作家に変貌していたのですが、一体何があったのでしょうか?

 自分が知る限りですと、この『安達としまむら』以外に、『少女妄想中。』や『きっと彼女は神様なんかじゃない』、『世界の終わりの庭で』などといった百合作品を近年多く出しているイメージがあり、そしてなにより去年アニメ化した『やがて君になる』のスピンオフ小説『やがて君になる 佐伯沙弥香について』を出していて、しかも人気によりつい最近スピンオフ第二弾を刊行したというじゃないですか!? もうここまでくるとライトノベル界の百合専門家みたいな感じになっちゃっています。

 個人的には『電波女と青春男』の印象が強く、面白い青春ものを書く作家さんだと認識していましたが、なぜこんなことに……。『安達としまむら』シリーズ第一巻が発売された2013年に一体何が……。謎です。

 まあとにもかくにも、『安達としまむら』面白かったです。なんて言えばいいですかね……落ち着きのあるまんがタイムきらら作品のような感じがしました。日常系百合小説でしたね。

 そんなこんなで、『安達としまむら』のアニメ放送を期待したいのですが、これ原作を読んで思ったのですが、アニメ化大丈夫ですかね? この雰囲気をどうやって映像化するのか謎です。というか正直不安です。飽きっぽい人は冒頭で飽きるかもしれません。いや、アニメスタッフがなんとかしてくれるでしょう。

 というわけでいつ放送されるかわかりませんが、アニメ『安達としまむら』をよろしくお願いします。

 そうそう、今回は既に購入していたからよかったものの、自分Amazonの欲しい物リストに入れたまま放置している購入前積読がありまして、で、購入前積読している作品でいつの間にか映像化が決まってしまったパターンが何回かあります。最近だと『虚構推理』のアニメ化とか、『いなくなれ、群青』の実写映画化とかですかね。もうこの際映像作品を見てから原作を読むか、それとも公開前に読んでしまうか、悩みどころです。どうしよう……。

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