【小説】『86―エイティシックス―』を紹介。祝アニメ化! けど、これアニメ化して大丈夫か?

 先週、『86―エイティシックス―』のアニメ化が発表されました。

 電撃文庫公式ツイッター 『86-エイティシックス-』アニメ化告知ツイート

『86―エイティシックス―』は第23回電撃大賞で大賞を受賞したライトノベルであり、個人的には近年の電撃大賞受賞作品の中でもトップクラスに面白かったと記憶しています。そんな傑作ライトノベルのアニメ化速報を耳にしたとき、「やっとアニメ化したか」といった感じで、むしろアニメ化発表遅すぎなのでは、と思ったくらいです。

 ただそんな傑作『86―エイティシックス―』ですけど、ちょっと心配になっているところもあるので、そのあたりを踏まえながら『86―エイティシックス―』について紹介していきたいと思います。

 ちなみにですけど『86―エイティシックス―』は第一巻しか読んでなく、しかも読んだのはもう数年前なので、いろいろと曖昧なところがありますがご了承を。

  基本的な書籍情報。

  著者:安里 アサト

 『86―エイティシックス―』

  KADOKAWA 電撃文庫より出版

  刊行日:2017/2/10

  あらすじ

 “その戦場に死者はいない”――だが、彼らは確かにあそこで散った。 サンマグノリア共和国。そこは日々、隣国である「帝国」の無人兵器 《レギオン》による侵略を受けていた。しかしその攻撃に対して、共和国側も同型兵器の開発に成功し、辛うじて犠牲を出すことなく、その脅威を退けていたのだった。 そう――表向きは。 本当は誰も死んでいないわけではなかった。共和国全85区画の外。 《存在しない“第86区”》。そこでは「エイティシックス」の烙印を押された少年少女たちが日夜 《有人の無人機として》戦い続けていた――。 死地へ向かう若者たちを率いる少年・シンと、遥か後方から、特殊通信で彼らの指揮を執る“指揮管制官(ハンドラー)”となった少女・レーナ。 二人の激しくも悲しい戦いと、別れの物語が始まる――! 第23回電撃小説大賞 《大賞》受賞作、堂々発進!

 救いようのない絶望的な世界観は、さながら『進撃の巨人』を思わせるものがあると感じています。というか『進撃の巨人』の巨人が、敵国の無人兵器に代わったようなものかと。一見共和国と帝国との戦争もののようですけど、実際に読んでみると実は帝国が……みたいな感じになってしまっているので、無人兵器 《レギオン》がそのまま理不尽の権化となっている模様。この辺りがまさに『進撃の巨人』の巨人っぽさを出しています。

 加え、主人公サイドである共和国の実情もディストピア感があり、またライトノベルでありながら文章が高尚な書き口になっているのも合わさり、さながら本格SFの様相を呈しています。……まあ普通にSF作品なんですけどね。ただあくまでライトノベルとして出版されている作品のため、緻密な科学考証を用いたゴリゴリのハードSFというわけではなく、エンターテインメントの範囲に収まるよう世界観の設定などが工夫されています。この辺りに関しては狭義主義のSFマニア(SF警察)にとっては「これはSFじゃない!?」と憤慨しそうでもありますが、この作品ではSFはSFでもロボットアニメのようなSF感と表現した方がしっくりくるかと思います。まあ事実メカものですしね。「ガン〇ムはSFじゃない!」とよく言われますが、いや普通の感覚としてガン〇ムはどう考えてみSFだろ、みたいなものかと思います。『86―エイティシックス―』は普通にSFです。

 さて、ここで「ディストピア」というキーワードが出てきましたけど、まさにこの作品の最大の特徴でもあるのが、タイトルにもなっている「存在しない第86区」になります。

 この「エイティシックス」、彼らは一体どういう存在なのか? 一言にいってしまえば、彼らは移民です。

 主人公サイドの共和国という国は、元々古くから色白の人種が暮らしていた地域であり、のちに博愛と寛容により他の民族を受け入れ、多文化国家となったわけです。しかし帝国と、ひいては無人兵器レギオンとの戦争が始まるやいなや手のひらを返したように有色人種を迫害し、強制収容するようになったのです。それがつまり「第86区」。第86区が「存在しない」というのは、色がある「エイティシックス」は人間ではなく人の形をした豚であり、人間ではないから共和国の国民として認めることはできないよね、ということ。そして人間ではないから、「エイティシックス」が搭乗する兵器はつまり無人機だよね、という最早狂気ともいえる考え方が共和国の国民、色白人種の新たな常識として定着してしまっているのです。あらすじにある「有人の無人機」というのは、こういった背景があります。

 この、ライトノベルにしては重たすぎる設定が物語に深みを与え、読後の大きなカタルシスを得る仕掛けとなっているのです。

 しかしながら、これ、思いっきり人種差別を題材にした作品となります。よくも悪くも人種問題に鈍感である日本国内において流通するライトノベルだからこそ、そこまで炎上することなく娯楽作品として消化されています。

 ですが昨今ではアニメ作品を海外に向けて配信してもいます。そして外国では日本よりはるかに人種問題に敏感であり、非常にデリケートなものとなります。そういった面から「本当にアニメ化して大丈夫なの?」と心配になるのです。

 とくに近年はよりポリコレ意識が世界的に高まっている時代でもあり、わかりやすいところでいえばハリウッド映画とかポリコレを意識し過ぎて縛りがきつくなっている印象を受けます。スター〇ォーズとかも、昔の作品と比べると新しい作品はいろいろと配慮した結果ああいう形に収まった感がひしひしと伝わってしまいます。

 自分なんかは、確かにポリコレ意識は大切だけどフィクションはあくまでフィクションとして消化するべき、という考えもありまして、こういったデリケートな題材を扱った作品でも極力現実と混同しないよう意識しています。ただ一方、現実とフィクションを区別できず同一のものとして捉えてしまう方というのは一定数存在しているのも事実です。

 最近のニュースでいえば、たとえばオーストラリアの議員が日本のアニメを有害コンテンツとして規制しようと圧力をかけていたりしますし、日本国内でも凶悪犯罪が起きてその犯人の自宅からゲームやアニメグッズが見つかると「ゲームやアニメは犯罪を助長する!」などの頓珍漢な論調をするコメンテーターとか当たり前のようにいたりしますからね。そういったことを発言する人こそ現実とフィクションの区別がついていないじゃん、と突っ込みたくなります。

 こういったことから、「人種問題に敏感な海外」と「現実とフィクションを分けて捉えることができない」というダブルパンチにより、『86―エイティシックス―』のアニメ化はちょっと危ないのでは、と心配になっているのです。安全を考えると日本国内のみの放送で海外配信はなしの方がいいかと思いますけど、今の時代海外配信は巨大なマーケットですから、無視することもできませんよね。

 いやでも、人種問題を題材にしているからこそ、海外の方にとってはある意味身近な問題を取り上げていることでもあり、逆に共感して好意的に受け止める場合もあるかもしれません。

 どちらにせよ、『86―エイティシックス―』のお話そのものは非常に面白いので、アニメに関しては大絶賛されるかもしくは大不評を買うかの両極端になるのでは、と個人的に思っています。

 あとアニメ化に関して心配していることは、ストーリー構成の面ですかね。

 自分は、電撃大賞の大賞受賞作品ということで手に取って読んでみたのですけど、この『86―エイティシックス―』という作品は、単発の物語として完璧すぎるくらいにクオリティが高いのです。というかクオリティが高すぎて一巻で満足しちゃいました。いやだって、一巻読むとわかりますけど、これ二巻以降絶対蛇足になっちゃう感じの作品じゃん、という予感がプンプンしました。実際、まあネットの噂で耳にしただけですけど、シリーズものとしてそこまでいい感想を聞かないので、もしかして自分の予感は的中しているのかも? しれません。いや実際に読んでいないのでなんとも言えないのですけど……。

 あとどうやら二巻と三巻は上下巻としてセットになっているようなので、1クールのアニメとして三巻までやるとかなり駆け足になってカットの嵐になってしまうのではないかと。

 でも逆に第一巻を1クールに引き延ばしてしまうとスローペースになってテンポが悪くなってしまうかと。一巻を1クールに引き延ばしたアニメといえば、記憶に残っているところですと『六花の勇者』とかになりますかね。『六花の勇者』はストーリーそのものはすごく面白いんですけど、やっぱりなかなか話が進まずテンポが悪くなってしまっているんですよね。一巻1クールはうまいことアニオリを挟んでテンポがよくなるよう工夫しなければなりませんね。もしくは『ゴブリンスレイヤー』みたいに一巻の内容に他の巻の内容を詰め込むとか。

 いやでも……電撃文庫だし、KADOKAWAだし、連続2クールで放送してくれるかも?

 とにもかくにも、『86―エイティシックス―』は近年のライトノベル新人賞受賞作品の中でもトップクラスの傑作であり、ラノベSFとしてもここ十年の間では間違いなく一番な作品だと思っています。

 それだけにアニメ化は朗報ですし大きな期待を寄せています。ただ同時に心配になる要素が多々あるといった感じです。

 とにかく、テレビアニメ『86―エイティシックス―』の続報を待つしかないですね。楽しみです!

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