【映画】『HELLO WORLD』を見てきました。あれ? これ面白いぞ! まさにこういうSF映画が見たかった

※この記事は、小説投稿サイト「カクヨム」にて2019年9月25日に公開されたものを一部修正して転載しています。

カクヨム版

https://kakuyomu.jp/works/1177354054886711486/episodes/1177354054891300059

 9月20日に公開されましたアニメ映画『HELLO WORLD』を、仕事を早めに切り上げて見てきちゃいました。いやーよかったですよ。というわけで今回は『HELLO WORLD』について。

 公式ページ

https://hello-world-movie.com/index.html

 東宝ページ

https://www.toho.co.jp/movie/lineup/hello-world-movie.html

 あらすじ

 「お前は今日から三か月後、 一行瑠璃と恋人同士になる」 京都に暮らす内気な男子高校生・直実(北村匠海)の前に、10年後の未来から来た自分を名乗る青年・ナオミ(松坂桃李)が突然現れる。ナオミによれば、同級生の瑠璃(浜辺美波)は直実と結ばれるが、その後事故によって命を落としてしまうと言う。「頼む、力を貸してくれ。」彼女を救う為、大人になった自分自身を「先生」と呼ぶ、奇妙なバディが誕生する。しかしその中で直実は、瑠璃に迫る運命、ナオミの真の目的、そしてこの現実世界に隠された大いなる秘密を知ることになる。世界がひっくり返る、新機軸のハイスピードSF青春ラブストーリー。たとえ世界が壊れても、もう一度、君に会いたい——

 予告(YouTube)

 監督には『ソードアート・オンライン』や『 僕だけがいない街』で監督を務めた伊藤智彦、キャラクターデザインは『らき☆すた』や『けいおん!』の堀口悠紀子(「白身魚」名義でイラストレーターとしても活動。ライトノベル『ココロコネクト』のイラスト担当)、制作には『楽園追放 -Expelled from Paradise-』のグラフィニカが手掛けており、アニメファンにとっては期待高まる注目の布陣であります。(敬称略)

 そして脚本には、『正解するカド』の野崎まど先生です!

 ……はい。ここで「え?」とか「ん?」と感じた方は、立派なアニメファンです。

『正解するカド』とは、2017年の春アニメとしてテレビ放送された作品で、シリーズ構成と脚本を手掛けたのがまさに野崎まど氏です。序盤の、とくに第1話と第2話の緊迫したストーリー展開により視聴者を強く惹きつけ、名作の予感がするといった感じでちょっとした話題になったアニメでした。

 ですが、後半以降の展開があまりにもあんまりなものでして、控え目に言ってお粗末で酷い内容でした。当然ネット上では大炎上し、失望する視聴者が続出。しかもしまいには、毎期クソアニメを決める恒例スレッドにおいて堂々のワーストアニメに認定されるといった、最早誰しもが酷いアニメと認めるある意味伝説を残した作品でした。いえ序盤は本当に神アニメだったんですけど、後半はもうほぼネタアニメとして楽しむしかないくらいの落差のある作品だったのです。

 ですので今回のアニメ映画『HELLO WORLD』において、監督がSAOの人! キャラデザはけいおんの人! 制作は楽園追放! ……ときて期待が高まるものの、脚本がカドの人ということで「えぇ……ちょっと……」と困惑して期待できなくなった方、おそらくその反応は正しいです。『正解するカド』の伝説を経験したアニメファンの方であれば無理もありません。

 だがその不安は杞憂です。この『HELLO WORLD』という映画は、まさに『正解するカド』の汚名返上を成し遂げた傑作アニメ映画なのです。これはあくまで個人的な感想ですが、正直に言うと先月見た『天〇〇子』よりも断然面白かったです。というか割とガチで近年見たアニメ映画の中で一番の作品かもしれません。

 では自分が『HELLO WORLD』のどういったところにハマったのかを、ざっくりとピックアップして紹介します。

 まずは冒頭です。2027年の京都を舞台にした物語であり、その近未来感を表現している場面となります。ただ近未来と言っても2027年ですから、今から10年も経過していませんので、視覚的にそこまで大きく変貌しているわけではありません。ですがシステムとしてはとても面白い変貌を遂げています。

 2027年の京都では、企業と大学と行政による共同事業のプロジェクトが行われており、京都の街のより詳細な地理データを作っています。今でこそグーグルマップやグーグルアースなど、2Dの地図だけではなく3Dの地図を閲覧できるサービスがありますが、作中での京都プロジェクトは3Dマップに「時間」の概念を加えた画期的なものです。つまり過去に遡って過去の地理情報を調べることが可能になった世界です。

 作中の京都では多くのドローンによる空撮が行われ、衛星写真ではカバーしきれない細かい街並みまでもを克明に記録しています。ただプロジェクトの期間が長くなればなるほど当然データの量は膨大になります。それを解決しているのが量子記憶装置(作中でカタカナの名前が登場しましたが思い出せません。確か「アルなんとか」だったような気がします)。量子力学による記憶装置はまさに無限の記憶領域を持っており、日々変化し続けていく街を高い精度で再現しているわけです。

 この冒頭での設定開示のシーン、なんちゃってSF好きの自分としては思わずニヤリとしてしまうくらい大好物な場面だったのです。もうですね、興奮ものですよ。冒頭のこの設定で一気に作中の世界に引き込まれましたね。

 そこから、実は主人公がいる世界は京都プロジェクトの中の世界、つまり仮想世界でしたーという種明かしが序盤でされます。あらすじではなんだかタイムリープもののような書き方をされていますが、予告映像では思いっきり仮想世界であることを明かしていますので、これはネタバレの範疇ではないことを一応言っておきます。『HELLO WORLD』はVRものです。地理情報に時間の概念があるので、事実上仮想世界と化している、ということです。

 それであらすじにも書かれている通り、10年後の自分が主人公のもとに来るというお話ですが、これも言わば大人主人公が仮想世界の外部から少年主人公(VR)の時代にアクセスしているといったものになります。要はアーカイブを閲覧しているのと同じ状況ですから、むしろ少年主人公の方が大人主人公の10年前を再現している、ということになるのです。タイムトラベルしてますけどそれはあくまで電子的なタイムトラベルであり、特別なタイムマシンなどが登場するわけではなく実にシンプルな時間移動になります。そして大人主人公はある目的のために過去のデータにアクセスして記録を改竄するぞーというノリで、過去再現世界での主人公とヒロインをくっつけちゃえ!として、『HELLO WORLD』の本筋のストーリーが展開されていくことになります。

 もうね、前置きのSF設定の時点で既に面白いんですよ! そしてそのSF設定をうまいこと絡めた前半のボーイミーツガールのパートは、さながらよくあるタイムトラベルもののようであり、王道的な時間SFとなっています(でも実際はあくまで過去の現実を再現したVRですけど)。青春SFが好きな自分にとって好みに直撃しましたね。

 その後物語の中盤に差し掛かったところで「実は○○でした!」として、話が大きく転化していきますが、その転化も「実は××でした!」でさらに上書きされる展開ですので、どんでん返しの上にまたどんでん返しを重ねるといった、物語の緩急が激しくさながらジェットコースターのような構成になっています。そして後半は最早勢いで押し切るくらいの怒涛の映像ラッシュであり、クライマックスにふさわしいものに仕上がっていました。もうですね、前半の青春パートが嘘のように激しすぎるストーリー展開に脱帽ものでして、ずっと目が離せませんでした。いやこれはスゴイ。スゴイというかヤバいです。これはヤバいです!

 あとこれも触れておかなければなりませんね。この映画のキャッチコピーの一つに「この物語(セカイ)は、ラスト1秒でひっくり返る――」とあり、確かにオチでもどんでん返しが用意されているのですが、意外性というよりはある種腑に落ちたと言いますか、あのオチがあることで作中の状況の全てがちゃんと繋がったような気がします。あのオチによって「なるほどそういう話だったのね」といった感じですかね。中盤で「実は○○でした!」からクライマックスに向けた「実は××でした!」からの、オチとしての「実は△△でした!」という流れ。いやこれストーリー展開激しすぎるでしょ! とんでもねぇわ!

 といった具合に、『正解するカド』と同じ人が書いた脚本とは思えないほど、『HELLO WORLD』は正真正銘の神シナリオでした。

 で、この『HELLO WORLD』を実際に劇場で鑑賞して思ったことですが、この作品は野崎氏の小説作品『know』に通じるものがあるような気がしました。『know』はハヤカワ文庫JAから出ているSF小説でして、第34回日本SF大賞にノミネートされるほど傑作と名高い作品です。

『HELLO WORLD』も『know』と同様近未来の京都を描いたSF作品であって、雰囲気としては似ている部分もあるかと思います。ただ『know』という作品はSF設定の面白さと、適度な哲学と、そしてストーリーの意外性というところが特徴の作品でして、一方で『HELLO WORLD』は『know』のテイストをアニメ映画としてよりエンターテインメントに寄せたようなイメージを抱きました。

 つまりは『HELLO WORLD』という映画は、傑作SF小説『know』を書き上げたSF作家野崎まどが帰ってきた、といった具合になるかと思います。

 よって映画の宣伝で制作スタッフの紹介の際の代表作には、『正解するカド』ではなくむしろ『know』の方が内容的に合っていると思わずにはいられません。「脚本は『know』の野崎まど!」です。ただまあ知名度としては確かに『正解するカド』の方が有名ですから、代表作ということならばやっぱりカドになってしまうのですけどね。個人的には『正解するカド』という作品を記憶から消したいくらいです。

 そんなこんなで、自分としては『HELLO WORLD』はSF作品として、そして劇場アニメ作品として傑作だと感じました。なんだか久々に満足して映画館をあとにしたような気がします。またちょっと時間を作って二回目の鑑賞に行きたいですね。

 ちなみにあまり関係ないですけど、この記事の冒頭でも述べたように、今回は仕事を早く切り上げて映画を鑑賞したのですが、それ故に映画後はちょうど部活帰り(?)の学生さんたちの帰宅ラッシュでした。その中電車の車内にて、親友にするにしては過剰なスキンシップをし合っている女子高生二人を目の前で目撃してしまい、電車から降りるまで百合的に非常に眼福であり映画の余韻など一瞬で消し飛んだことは、ここだけの話とさせていただきます。あれは……スゴイ……。リアルで百合百合してた……。

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