【アニメ】『プリンセス・プリンシパル』を紹介。近年稀に見る傑作百合SF

※この記事は、小説投稿サイト「カクヨム」にて2019年7月21日に公開されたものを一部修正して転載しています。

カクヨム版

https://kakuyomu.jp/works/1177354054886711486/episodes/1177354054890392693

 前回は『アステリズムに花束を 百合SFアンソロジー』について取り上げましたが、今回は百合SFとしてお気に入りの作品を紹介します。……小説作品ではなくアニメ作品ですけど、そのあたりはご愛敬ということで。

 タイトルは『プリンセス・プリンシパル』。ちょうど一昨年の夏、2017年夏アニメとして放送開始したオリジナルテレビアニメです。

 公式ページ:https://pripri-anime.jp/

 あらすじ

 東西に分裂したロンドンで繰り広げられる、少女たちのスパイアクション!舞台は19世紀末、巨大な壁で東西に分断されたアルビオン王国の首都ロンドン。伝統と格式ある名門、クイーンズ・メイフェア校には、5人の少女たちが在籍していた。彼女たちは女子高校生を隠れ蓑に、スパイ活動を展開。変装、諜報、潜入、カーチェイス……。少女たちはそれぞれの能力を活かし、影の世界を飛び回る。「私たちは何?」「スパイ。嘘をつく生き物だ」

 ザックリと言い表すと、美少女スチームパンクスパイアクションです。ええ、いろんな属性をてんこ盛りにした作品ですが、それだけに見応え充分な内容となっております。

 まず今作の注目すべき点であるスパイ要素ですが、これがまた見事なサスペンスでして、とにかく伏線回収がとんでもない作品となっております。何気ない、ちょっとした台詞や描写などが実は伏線であり、一話完結の物語においてラストのオチまでに綺麗に回収しています。もう本当に、「え? それも伏線だったの!?」と思わず言ってしまいたくなるほどの緻密に練られたストーリー構成は脱帽ものです。

 また一話完結としてその回で回収する伏線もあれば、シリーズ通しての伏線もあり、見返す度に新しい発見があるアニメ作品です。テレビ放送時には様々な意見交換が行われるほどの考察アニメでして、一回だけ見るタイプの作品ではなく何度でも視聴できてしまう強度のある内容はもう素晴らしいの一言です。

 さらに素晴らしい要素としてはアクションシーン。確か5話あたりの殺陣シーンは華麗にヌルヌル動く作画でして、これは自分も驚きを隠せませんでしたね。これ近年のアニメの戦闘シーンにおいてトップクラスの名場面だったと思います。それに5話だけではなく他の回でも見応えのあるアクションシーンがあり、アニメーションとしてとても秀逸な映像に仕上がっている印象を受けました。

 と、ここまではスパイものとしての魅力について語りましたけど、SFとしても魅力溢れる作品です。舞台は架空19世紀でして、もう蒸気プシューの歯車グルグルのバリバリなスチームパンク作品であり、背景美術がとにかくエモいのです。この19世紀ロンドンといえば史実だとヴィクトリア朝であったり産業革命があったりした時代ですけど、この辺りの描写も細かく表現されています。

 またこういった描写もさることながら、レトロフューチャーとして舞台を膨らませています。登場する銃や自動車もモデルとなった19世紀という時代を踏襲していますし、なにより作中で登場する重力操作のガジェット「ケイバ―ライト」は、確かH.G.ウェルズのSF小説に同名の物質が登場したと思います。こういった古典SFからのパロディも含まれており、SFマニアからすれば思わずニヤリとしてしまう、SFのツボをおさえたギミックがあったりします。

 スチームパンク作品ですけど、そもそもスチームパンクはサイバーパンクの派生ジャンルであり、「パンク」とついている以上社会や体制に対する反発を描くものと思います。サイバーパンクもそうですしスチームパンクでも同じで、物語の舞台となっている世界に反抗的な要素を含ませることが重要だと考えています。よって、ただ蒸気技術が発展しているからスチームパンクだ、という認識はちょっと違うような気がします。それは広義的にレトロフューチャーに分類するかと。

 ではこの『プリンセス・プリンシパル』はどうなのかというと、登場するプリンセス、そしてプリンセスに深い繋がりがあるアンジェも、諸事情により分断されたロンドンを変えたいという意志があり、その部分は現体制からの変化を望んでいるという解釈もでき、充分パンクな要素となっているかと思います。あまり語ってしまうとネタバレになってしまうのですが、個人レベルの関係性を改善するために国を変えてしまおう、というお話になります。19世紀が舞台であることもあり、これってもう立派なスチームパンクではありませんか!

 ただスチームパンクの観点から作品を紐解いていくと、後半のクライマックスの部分、1クールのシリーズものとしての締めの部分に違和感を覚えてしまうかと思います。物語の目的を大きくしたわりには、オチとしては実に小ぢんまりした印象となるかと。大言壮語もいいところです。この辺りのことが、この『プリンセス・プリンシパル』というアニメにおいて賛否両論を生んだ要素となるかと思います。

 ですがこの賛否両論のオチも見方を変えると、これ以上にないベストなオチであると解釈することも可能となります。そしてその解釈こそが「百合」です。

 私ははっきり言いますけど、この『プリンセス・プリンシパル』というアニメ作品において、スチームパンクはあくまで舞台装置でしかないと考えています。

 よってスチームパンクとしての社会や体制へのパンクな物語を期待してしまうと、コレジャナイ感が出てきてしまうのです。作品の中で蒸気や歯車が登場しスチームパンク特有のガジェットも多く登場しますが、実際にじっくり映像を見てみるとスチームパンクの要素ってそこまで強調してはいないことに気がつきます。回によってはスチームパンク関係なく単純に19世紀をモチーフにしたお話というパターンもあったりします。

 イメージとしてはスチームパンクを土台にして、その上に「スパイ」や「美少女」といった要素を乗せていった感じですかね。どちらかというとスチームパンクはメインではないのではと思います。

 ではメインとは何か? 先述した通りスパイものとしてのサスペンスもメインですが、もう一つのメインとして少女たちの青春物語というのもあると思います。

 スパイ活動において得意分野を持つ5人の女の子たちが、学校の部室を拠点に暗躍する設定。裏の顔もあれば当然表の顔もあって、集まって女子会している場面はまさに年相応の女の子でしかなく、その部分では日常系アニメに通ずるものがあると思います。スパイアクションと日常系の緩急のバランスがいいため、シリアスなシーンでも確固たる信頼を読み取ることができます。そして女の子同士の信頼は百合的にとてもおいしい要素となるのです。日常系アニメで唐突に感じる「尊さ」を、このシリアスなアニメにおいても感じるのです。

 で、とくに尊いのが中心人物であるアンジェとプリンセスです。アンジェとプリンセスの関係は物語においてとても重要であり、少しでも語ってしまうと即ネタバレになってしまうので、もう何も言えないです。ただお互いが全てをかけて想い合っているとだけ言えましょう。それも個人の感情が国を揺るがすレベルの関係です。

 そういったバックボーンがあるなかでの日常シーンにおいてイチャコラしていますから、尊さの破壊力が凄まじく百合として衝撃的なのです。ああ……ネタバレ覚悟で語りたいけど、とりあえずアンジェとプリンセスの尊さの背景を知りたいならば2話と8話を交互に視聴してください。2話と8話を見ると語彙力が消失するレベルで尊さを感じます。「あら~」とか「キマシタワー」とかで表現できない至極の百合エピソードになっています。

 この2話と8話と、あとその他のシーンにおいての二人の絆を前提として後半のクライマックス部分を見ていくと、賛否両論あったラストも「これはこれでいいのでは?」と思えてくるようになります。

 スチームパンクとして話を大きく広げていますけど、でも根本の部分ではアンジェとプリンセスの二人の関係が起点となっています。その個人レベルの関係性という観点から見ていくと、あのラストも二人の関係性の解決という解釈ができるのです。

 つまりスチームパンクとしては投げっぱなし気味となっていますけど、百合としては個人レベルの関係性から国を巻き込んで最終的には個人の関係に帰結する、といった見方が可能なのです。作品の主題がスチームパンクではなく百合として見ると、あのラストはとてもいい落としどころだと個人的には思っています。

 ただ、じゃあスチームパンク作品としてダメなのかといえばそうでもなく、先程も述べた通りSFとして趣向を凝らしたギミックがふんだんに盛り込まれており、それこそSFとしてのセンス・オブ・ワンダーということになるのではないでしょうか。

 よってこの『プリンセス・プリンシパル』というアニメは、スチームパンクを土台にして本筋として百合を描いている作品であり、このSFと百合の絶妙なバランスによって、SFとしてのセンス・オブ・ワンダーと百合としての尊さを同時に堪能できる内容になっているのです。ということは百合SFとしてこの上ない傑作と言っても過言ではないでしょう。

 ……という記事を、一昨年の記憶だけで書いてきました。大分内容が怪しい部分もあって、「アレ? もしかして見当違いなこと言ってる?」と不安になってきました。家にブルーレイ全巻揃っているので、時間を見つけて二年ぶりに視聴しなおそうかしら?

 と、ここで朗報です! なんと今期『プリンセス・プリンシパル』が再放送されています。まだご覧になっていない方は是非この機会に視聴してみてはいかがでしょうか。確か日曜日の深夜枠だったと記憶しております。もう1話か2話くらいまで放送してしまったかと思いますが、まあ見逃した数話はニコニコ動画とかAmazonとかに課金して見てください。おそらく1話200円か300円くらいで視聴できると思われますので。

 一応ニコニコ動画のページを貼っておきます。

『プリンセス・プリンシパル』ニコニコチャンネル

https://ch.nicovideo.jp/pripri-anime

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